「日本版DMO」を調べながら、問題だと思ったこと

2017.06.21

DMOというキーワードをある人から頂いたので、官公庁の出している資料などを中心に情報収集をしてみたところ、色々と引っかかるものが出てきました。例によって、オチも考えず筆の向くまま書いてみます。

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言いたいことの大半は『地方創生大全』に書いてある

まず、先に関連しそうな参考資料や事前に読んでいた本を挙げておこう。

観光庁などの出している資料もざっと見てみた。また、すでに動いている事案もざっと見てみたり。まぁ、どんなところが問題なのかは冒頭に書いた通り、『地方創生大全』にほとんど書いてあるので、そこで語られていないことを幾つか書いてみる。

考え方のベースが微妙にズレている気がする

経験と勘と思いつきに基づかず、データや数値に基づいたマーケティング、マネジメントで地域振興を図りましょう。KPIが大事だ、と。官公庁の出されている資料なので、間違いがないとは思うのだけれども、だからと言って間違っていないかというとそうでもない気がする。

日本版DMOのサイトで掲げられている資料の中身は、マーケティングやコンサルティングの教科書で良く見かける内容ばかり。ということは、考え方がすでに古い。歴史がある、洗練されていると言えなくはないし、「間違いがない」フレームワークやモデルなんだろうけど、それで解決したいのは「今」や「これから」の問題。「今まで」は正しかったものの、これからも間違っていないとは限らないし、「それで上手く行く」のなら、わざわざ「お上」がお触れを出さなくても民間の動きで上手くいっていた事例も出るはず。

「地方創生だ」と意気込んで、今ようやく上手く行くようになったのか? そうじゃないと思う。多分、「今は」上手く行っているだけで、そのうち失速してくる気がする。2年ぐらいは、経験と勘と思いつきに基づいていようが、データや数値に基づいていようが上手く行ったように見える。

問題は多分、そこじゃないんだろう。シンポジウムの動画で、ナパバレーの事例を現地の人がわざわざ紹介してくれていたが、本当にその本質を理解して輸入できているのか、はなはだ疑問だ。質疑応答のパネルディスカッションを見ていても、分かっているとは思えなかった。

「Why」がない。リアルな人の影を感じない施策に思える

シンポジウムの動画の中で言及されていた、「コト消費空間づくり研究会」やその派生に思える「地域ストーリー作りの実践について」。いずれも、研究や実践自体は無駄ではないと思うが、これもズレている感じがしてしょうがない。なんというか、「Why」がない。そして「What」も物理的な「What」しかないような気がする。すでに存在する、これから作り上げるに関わらず。

ナパバレーの事例には、「Why」と「What」とがしっかりあった。「なぜ」やるのか、「何を感じてもらうか」。それから「どうやって何度も楽しんでもらうか」や「どういう流れで楽しんでもらうか」ということまで考え抜かれていた。まだ、これから洗練や進化されていくのだと思う、素晴らしい事例。なのだけれども、日本版DMOの事例や周辺の事案を見る限り、そこがどうも弱い感じがする。

ハコモノありきの「コト消費」では考え方のスタート地点からずれているし、「地域ストーリー作りの実践」で挙げられているHPを見ると、ペルソナとシナリオづくりがなされているものの、「本当にそんなペルソナがいるのか」とか「血が通ったシナリオか?」とか「なぜ、その地域でそのペルソナ、シナリオなのか」といった部分が有機的につながっている雰囲気は感じられなかった。

RESASも、大掴み過ぎる気がする

まだそこまで触っていないのだけれども、ざっと見たところ、RESASが機能するのは大掴みな動向だけで、ペルソナづくりやその検証にはあんまり有効活用できる雰囲気はしなかった。あくまでも「魚群探知機」や「トレンド」を予測するためだけのツールであって、これに頼って何かを決めたり、データを優先しすぎてしまうと「どこかで見たような施策」しか残せない気がしてしまう。

「データありき」は未来を見誤る

経験と勘と思いつきに基づくよりは、データに基づいたほうがマシだし、数値を検証して科学的なアプローチをするほうがベターだとは思うけれども、データはあくまでも足跡。そしてそこから予測できる「傾向と対策」。データを前に持ってきてしまうと、データに振り回されてリアルな「今」や「予測できなかった未来」を捉えきれなくなる。

やっぱり、まず「Plan」ありき。その前に「Why」や時代のコンテキストを読むというのもあるのだけれども。自分たちのシナリオを作った上で、データで検証する。シナリオを修正していくという形でないと何も上手くいかない。そこを間違えないことが重要なんじゃないか、と。

「大きな金額」を「短期間に狙いに行く」と、間違える?

シンポジウムの動画の中で、ナパバレーの事例でも「年率2%未満の成長」という説明があった。これが、地味に大事だと思う。

どうも、日本版DMOの構え方や出て来ている資料とかRESASとかを見る限り、違う方向を向いているような気がしてならない。「存在しない大きなモデル」をデータを使って居るように見せかけて、大きなお金を動かそうとしているような。

でも、それでは上手くいかない。持続的な成長をもたらすには、時間をかけて大きくしていくしかない。あまりにも小さい数字からスタートすると経済的には無意味かもしれないけど、ゼロから徐々に大きくしていく、着実に大きく育てていくという肚の据わった関わり方をしていかないと地方創生どころか、日本全体がダメになるだろうなと思ってしまう。

そのために、「Why」をちゃんと考える。来てもらったお客様に「どんな感想を持って帰ってもらうか」まで考える。いろんな楽しみ方ができるように、でも有機的につながった状態を保てるように「コンテキスト」を作る。一つ一つのコンテンツを「一級品」にしておく。実在に近い、リアルなペルソナ、リアルなシナリオを作った上でデータを追いかける。KPIを検証、計測していく。それから規模を大きくしていく。関わる人、関われる人の裾野を広げていく。

部分最適では、上手くいかない。一つの「Why」や一つの「What」のために、全体最適をかけていく。それを、「DMO」もしくは「観光」や「短期滞在、住む」という軸でやっていけるかどうか。そこを考えるべきじゃないだろうか、と。

小さい経済をきちんとやりながら、全体最適に取り組んでいく

住んでよし、観光してよし、を両立させる。そのためにも、小さい経済をきちんと回す。大きな経済を見据えた上で、全体最適をかけながら成長をさせ続ける。経験と勘と思いつきじゃなく、計画とデータと「リアルな人」や「思いやり」に基づいた動き方で。楽して稼ぐのは諦めて、地道に当たり前のことを当たり前にやる。でも、戦略的に楽しんでもらえるように考えて、職人芸を発揮することも欠かせないから、かけるべきコストはきちんとかける。持続して成長できるようにハンドリングし続けていく。真面目に地方創生に取り組むのなら、もうそれしかないんじゃないかな?

執筆者プロフィール

長谷川雄治(はせがわ・ゆうじ)

物書きな作れるWebコンサルタント。
HTML/CSSのマークアップやWordPressのカスタマイズ案件を経験し、サービス構築やブランディング、サイト設計や戦略プランニング、各種原稿、書類作成まで担う。
独自色の強いコンテンツマーケティングの人という立ち位置も見出だしつつあり、不足しているものを補うべく、日々実践中。

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