「顧客満足」を優先して納品した案件は、割と短命だった気がする

2017.08.26

経歴を振り返る中で感じたこと、考えたことを幾つかのテーマに分けて書いてみる。何か伝えられれば良いのだけれども、何も伝わらなくても自分の棚卸をするつもりでアウトプットしていく。

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過去の振り返りをすると、下請け案件や孫請け案件、直接の案件も一つずつ思い返しながら、その時の反省や反動が今後のサービス体系を考える上での土台にもなっていることに気がついた。その際の思考の変遷や、気づきなんかもまとめておいた方が伝わりやすいかなと思ったので、改めていくつかにまとめてみる。

特に、「どんな案件がビジネス的に転けたか」は読む方のためにもなりそうなので、「こういう作り方をすると失敗しがちだった」というのを守秘義務を侵さないようにお伝えしていければと思う。

今回のテーマは、「顧客満足」

Webサイト制作における「顧客満足」。色んな要素や答えがあるのだろうけど、「制作」に重きを置いていた頃、マークアップやフロントエンドを中心に担っていた頃だとその答えは、「お客さんの欲しいものを作れるか否か」が基準。一旦着手したら最後、入金してもらうため、納品を完了させるためにどんなに無理なオーダーであっても叶えざるを得なくなると、なんとか納品したとしてもその後のサイトの活動期間は短くなりがちだった気がする。

予算と納期という基準はあったとしても、サイト発注に不慣れなお客さんやこだわりの強いお客さん、自分で作ったことがあって知識もお持ちの客さんとかだと、実際の仕事やできる範囲、Webのセオリーやビジネスのセオリー、プロの単価や人件費というものをあまりご理解いただけないまま、欲求やこだわりを爆発させて細かな注文を持ってきてしまう。

他のケースで短命に終わりがちだった「顧客満足」を優先したものを探すと、「デザイン先行」で出てきた案件も近い案件が多かった。「顧客の求めるもの」は作れたとしても、「実際には役に立たない」サイトに終わってしまうケースが多かったかな。見た目は良くできていて、お金を出す人の気持ちを満たすことができて、制作者としても「作った」という経験が積めたとしても、その後につながりにくい仕事の仕方だったかなと今は思う。

直接の案件でなくても、仕事を取ってきた人間、ハンドリングする人間がWebサイト制作に関する知識が少なかったり、「サイトを作った後」について思いを巡らせる力が甘かったりすると、たとえ下請け、孫請けであっても上手くいかないケースというのはチラホラあった。要件の整理をする人、企画のハンドリングをする人がプロでない場合も、自分の中ではモヤモヤする案件が多かったかなぁ。

もちろん、「請負」という観点からは責務を果たしたので問題ないのだろうし、責任の範囲的にも「瑕疵のないもの」を納品できれば十分なんだろうけど、作った後を考えないまま「とりあえず作るだけ」、「とにかく案件を終わらせて入金してもらうために納品する」だと、ビジネス的にも拡がり切らず、負うべきリスクも小さい代わりに、得られるリターンも小さくなってしまうケースが多々あった。

個人さんや中小企業さんだと、決して安くはない金額で発注いただくのだから、やっぱり回収が見込めないとなるとただのコストになってしまう。そうなると「次はもっと安いところに発注しよう」となって、「安かろう悪かろう」の世界から逃れることができなくなってしまう。そこを変えられないまま、見過ごしてしまったという意味では今もまだまだ罪は償えていない気がする。

教訓1.顧客満足より、エンドユーザーの満足が大事

結局、上で述べたように「顧客が満足するようなWebサイトを納品する」ことだけを考えてしまうと、お客さんも作る側もジリ貧に陥る。目先の経験値を得られたり、利益を上げられたり、手元の満足は得られたとしても、中長期的にはプラスになりにくい。

より重要なのは「顧客に満足してもらうこと」ではなく、「顧客のビジネス」に関与するエンドユーザーの満足度なんじゃないかというのが教訓の一つ目。サイト制作が仕事である以上、そこまででいいという向きもなくはないし、その方針も理解するけれども、そういうスタンスの事業者はどんどん淘汰されているのではなかろうか。

発注者である顧客自身ではなく、エンドユーザーの方を向いた中身、受け取り手の満足度を高めていかないと、「顧客のビジネス」が潤っていかない。顧客のビジネスを理解する、顧客のことを顧客自身以上に理解してあげる。適切な表現を一緒に探っていく形でないと、納品したWebサイトが使われないまま消えていってしまう。

折角の作ったのなら、長く使えるものをお届けしたいし、その上で「ビジネスで役に立った」と満足してもらいたい。そのためにも、「顧客の欲しいもの」ではなく「顧客に必要なもの」をお届けできるように、制作の過程で意思疎通を図らなくてはいけないんだろうなと思う。

教訓2.「作った後」にもっと重点を置く

「入金」が納品に絡みがちなため、どうしても「作る」や「作り切る」がゴールになってしまう。そうすると、「作った後」や「使うこと」はほとんど考えないようになる。でも、昨今のSEO事情やマーケティングなどを考慮すると、「納品しただけでOK」にはなりにくい。納品後、使うこと、使い続けてもらうことを作る側が考えていかないと、「顧客満足」を満たしてもビジネス的には上手くいかない。

顧客自身もビジネスについて考えているとは思うものの、WebサイトやSNSを利活用したビジネス展開、マーケティングやプロモーションまで詳しいとは限らない。デザインなり文章なり、顧客よりは「伝えること」に秀でている側が「要望」を調整してあげて、作った後どうなるかをフォローするというのも、場合によっては必要になる。

「作った時」に顧客満足を満たすように作るより、「使い続ける時」に顧客満足を満たせるような作り方、関わり方をした方が顧客のビジネスも自身のビジネスも上手くいくんじゃないかと思っている。

教訓3.Webサイトは「使うものだ」という認識が欠かせない

ビジネス全体の戦略によっては、印刷物のチラシや動画の広告のように「見せること」が主目的になるケースもゼロではないものの、基本的にWebサイトというのは「使うこと」を無視して作らない方がいい。

発注者によっては、チラシや動画と同じだと思われていて、「見栄え」を最優先にして満足を満たそうとする方もいらっしゃるが、それではエンドユーザーの満足も満たせないし、Webサイトの役目もあまり果たせない。「それでいい」と割り切っていて、お互いに意思疎通が図れていれば問題はないものの、「Webサイトを作れば自慢できる」とか「ビジネスが上手くいく」と思われている場合なら、それではどちらも「そんなはずじゃなかった」となってしまう。

やはり、「使うもの」であるという認識は持っておいた方がいい。「独自のセンスが光る見栄えのいいもの」よりは「聞かなくても使える平々凡々なスタンダードな仕上がり」の方が、Webサイトとしての要件を満たしやすいように思う。どうしても「回線の速度」や「読み込み」という要素も絡むため、見栄えを取って重くするのか、見栄えを犠牲にして使い勝手を取るかは、良くすり合わせるべきポイント。

ビジネス的にも「使える」ことを優先しておいた方が、エンドユーザーとの間に無用なトラブルを招かなくていい。口当たりのいい表現、訴求力を追求した表現で実態と異なる物を作ってしまうと、顧客満足は高くなっても、その後は大変な事態を招いたりする。きちんと納得していただいて、エンドユーザの満足を満たせるような形を目指した方が自分にも、顧客にも、世間的にもWin-Winな結果になるんじゃないだろうか。

結局は、顧客とのコミュニケーション、ビジネスへのコミットメント

顧客の知っていること、自分の知っていることをきちんと擦り合わせて、お互いに理解し合う、敬意を持ち合えるまで意思疎通を図るのがスタート地点。こういう泥臭いコミュニケーションを怠って作業に入っても、結果は芳しくない。

また、顧客のビジネスに関与するというのも、きちんと意識しておかないと結果には結び付きにくい。「作ること」が仕事だと思うとズレてしまうし、「一時的に見てもらうこと」を目指してしまうのも、ズレてしまう。

お客さんのビジネスである以上、全責任を負うのはお客さんなんだけど、自分の仕事が関わった上でビジネスが出来上がる以上は、そこに対してきちんとコミットメントして、よりいい方向に持っていけるように関わらないとお互いに損なのかなと。もちろん、自分のビジネスとしては「作ること」が主だからそこに注力すれば十分だったとしても、関わる人のビジネスにも本気で関わる姿勢を示すことが重要な気がする。

そういう気持ちの部分、泥臭い部分に手間暇をかけた方が、やっぱり上手く行きやすい。デジタルな印象の強いWebサイト制作であっても、肝はアナログなんじゃないかと、今は考えている。

執筆者プロフィール

長谷川雄治(はせがわ・ゆうじ)

物書きな作れるWebコンサルタント。
HTML/CSSのマークアップやWordPressのカスタマイズ案件を経験し、サービス構築やブランディング、サイト設計や戦略プランニング、各種原稿、書類作成まで担う。
独自色の強いコンテンツマーケティングの人という立ち位置も見出だしつつあり、不足しているものを補うべく、日々実践中。

2017.08.26

2018.04.29

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