合理的だけど実証できないものは気をつけたい

2017.09.07

不意に見かけた「適者生存」の使い方を見て、他の書籍で見かけた文章を思い起こしたので、オチも考えずに書いてみる。

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「適者生存」を最初に唱えたのは、ダーウィンじゃない

「環境に適合した種」が生き残るだの、「変化に適応したものが生き延びる」だの、ダーウィンの「進化論」でそういった旨が語られているかのように書かれることがままあるが、実際にダーウィンが唱えたのは、「自然選択」。適者生存を言い出したのは、同時代の社会学者であるハーバート・スペンサーである。

種の起源に「適者生存」の概念が取り込まれた時期や成立については、別途調べていただくとして、大事なのは「有名なフレーズ」に影響されすぎないこと。

「自然選択」は科学的に実証できるけど、適者生存は立証が難しい

自然選択とは、個体や種に発生した変化について、「自然環境がふるい分けの役割を果たすこと」。ある瞬間に起こった変化、発生した変化が、生存と繁殖に優位に働くかどうかが自然環境によって試される、ということ。その繰り返しの結果、どの種が生き残るかが明らかになるというのが、ダーウィンの唱えた自然選択。これは、実験すれば実証可能だろう。大腸菌やバクテリアと実験室を用意すれば、どの個体が生き残るか、その作用を見ることは難しくない。

ただ、適者生存、「変化に適応したから生き残るかどうか」や「環境に適合していたから生き残ったかどうか」については、実証が難しい。今生き残っている個体や種を見て、「なぜ生き残ったか」、「どんな変化が起こったから生き残ったか」の因果関係をどうしても見始めるようになる。

「生き残ったからには、環境に対して優位な要素があったはず」と、それらしい答えが見つかってしまえば、そのまま結論付ける。「生き残る」は合理的な結果。「生き残ったから理由がある」も、因果関係を持ち出したくなる人間の脳的には、合理的。その状態で「当てはまる答え」が出てきたら、たとえ間違っていても、無関係な要素であっても、ぴったり収まるのだから合理的。検証する必要を考えられる人でない限り、そこで思考を止めて答えを出してしまう。

こういう事実誤認、「一見合理的に思える因果関係」に飛びついてしまうと、そこから先は大きな失敗が口を開けて待っている。

これがもし、生物進化において、自由に考えるだけなら大した影響はない。ちょっと詳しい人に笑われたり、悔しい思いをするだけで終わる。しかし、ビジネスにおける生存競争に持ち込むと厄介な事態に陥る。事実誤認を訂正してくれる親切な人は中々いない。自分で勝手に問いを立てて、答えを見つけてしまえば、プロに相談することなく後戻りできない行動に踏み出す人もいる。問いかける人も、結論を出す人も、検証する人も、本物のプロや学者とは限らない中、「合理的に思える」だけで飛びついてしまうと、その後の失敗は関わる人数が増えれば増えるほど大きくなっていく。

こういう時に「ちょっと待って」とブレーキをかけられる人をそばに置いていればいいものの、思い込みで見切り発車するような人、頭で考えるより行動が先という人の場合、中々そうはいかない。イエスマンだけをそばに置き、事実誤認、実証できないものに飛びついて、周りの人間を巻き込んでド派手に自殺していくのを何度か見た。

「因果関係が必ずある」と思い込まない方がいい

事実を積み上げていって、未来予測する際には「因果関係」を持ち込むのはそこまで大きな問題にならないが、結果を見て、「(必ず)原因があるはず」と鼻息荒く答えを探す場合、間違いを犯しやすい。力が入っている「問い」であればあるほど、急ぎで解かねばならない問題であればあるほど、その危険性は大きくなる。

「結果があるから原因がある」とストーリーを作りたがるのは、脳の仕組み。ひとまとまりになっていると収まりがいい、脳を省エネで運転できるから、当てはめたくなる。でも、その状態で出てきた答えをよくよく吟味しておかないと、それはただの「思い込み」になる。思い込みの上に立脚する構造物なんて、耐震偽装もいいところ。砂上の楼閣というやつになる。

因果関係が必ずあるとは限らない。「分かりやすい答え」は本当のお宝を隠したい人間のトラップかもしれない。思い込みで片付けようとするのは、脳の省エネ作戦かもしれない。本当にその因果関係、合理的なストーリーが正しいのかどうか、検証する癖をつけた方がいい。また、できることならその検証時に頼りにするものも、確かなものを選ぶようにしよう。時々、「プロ」とか「資格持ち」とか言いながら、中身は大したことのない人だったり、プロとは名ばかりの偽物の可能性も十分ある。それこそ、時間の流れに耐えているものかどうか、環境に選択されたものかどうかで判断するのがいいんじゃないだろうか。

トドのつまり、「一見合理的」は案外危うい

マスメディアの作る事件、政治家の作るフェイクニュース。ビジネスにおけるおいしい話。その他諸々、「怪しい話」というのは大体合理的。論理的にも破綻が少なかったり、混ぜ込む嘘は少なかったりするのだけれども、短絡的な答え、あまりにも分かり易すぎる建て付けのシナリオは、用心しながら聞いた方がいい。

合理的でなくても、実証されているものもあるし、合理的だけれども、検証も実証もできないものもある。脳みそ使わないと飲み込みにくい方が、正しい答えだったりするので「脳みその省エネ作戦」に負けないよう注意したい。

執筆者プロフィール

長谷川雄治(はせがわ・ゆうじ)

物書きな作れるWebコンサルタント。
HTML/CSSのマークアップやWordPressのカスタマイズ案件を経験し、サービス構築やブランディング、サイト設計や戦略プランニング、各種原稿、書類作成まで担う。
独自色の強いコンテンツマーケティングの人という立ち位置も見出だしつつあり、不足しているものを補うべく、日々実践中。

2017.09.07

2017.09.07

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