約束事を破綻させれば、大抵のものは壊せる?

2017.09.12

随分前に読んだ気がする『国家はなぜ衰退するのか』と、『ホモ・ルーデンス』とが何となく接点がありそうな気がするので、オチも考えずにアウトプットしてみる。

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ホイジンガの取り上げた「スポイル・スポート」が凄まじい

ホイジンガといえば、「人は遊ぶ動物だ」とした『ホモ・ルーデンス』。「遊び」というテーマで、色んな文化や人と人の間で成り立つものについて書き記した著書。「遊び」というと、何となく幼稚なイメージを抱くかもしれないが、彼の言う遊びというのは「参加者の積極的な関与が必要となる仮想的なもの」なんじゃないかと捉えると、その枠はググッと拡がっていく。もちろん、枠を広げずに「遊びのことなんでしょ」と読み通していただくのも、否定はしない。

参加者の関与が必要となる仮想的なもの。他にどんなものがあるかと言えば、そう「政治経済」やら「戦争」も一種の「遊び」。一定のルール、約束事が定められていて、みんなが一定のルールに則って動かないと、徐々に全体が崩壊してしまう、概念自体が成り立たなくなってしまう、実体のないもの。硬貨や紙幣だって、みんなが一種の約束を信用しているから使える訳で、その約束を信じていない人や、約束が通用しない所へ出てしまうと、自分自身では価値があると思っていても使えないという自体もあり得る。

だから、誰かと誰かが存在して、お互いに暗黙の了解や一定の取り決めの上でやるものは全て、「遊び」と同等の要素を保有していると考えてみてもいいんじゃないか、と。ということは、「遊び」を成り立たなくさせる概念を持ち出してくると、仮想的な概念を成り立たなくさせるのにも使えるんじゃなかろうか。

その「遊びを成り立たなくさせる概念」が、ホイジンガが『ホモ・ルーデンス』に書いた「スポイル・スポート」。遊び破り、規則を破る者と言い換えられる。ルールが成り立たなくなるレベルのズルをする人、と思ってもらってもいい。

ただただ自分が勝つために、自分勝手に決め事を破る人が混ざれば、その遊びは破綻していく。参加人数が少なかったり、ルールがシンプルな遊びであれば、一気に崩壊する。誰が悪かったのか、どんなズルが悪かったのかがすぐに分かって、取り締まられる。それでも腕力が強かったりすれば、そのまま逃げおおせたり、新たな支配者となって別の遊びを始めるかもしれないが、そうなると他の参加者は意欲をなくして、つまらない遊びにしかならないだろう。もしくは、新たな支配者を打ち倒すべくクーデターを起こすとか。

「遊び」が楽しいのは「公平なルール」が存在することと、それに則って努力すればいつか勝利をつかめること。勝者と敗者とが気を抜いた瞬間に入れ替わったり、自分の優位さが自らの采配によって変化するところ、とか。「ルールを守る」と自分にいいことがある(かもしれない)というインセンティブが働くかどうかが、非常に大事。このインセンティブがきちんと機能するかどうかが、その遊びに参加し続けるかどうか、遊びの上に成り立つ概念を守るために力を尽くすかどうかに大きく影響してくる。

規則を破っても勝てる、とか。規則を破っても遊びから排除されないとなれば、みんな規則を破り始めるか、遊びそのものを止める。インセンティブも意味がないとなれば、積極的に取り組むこともなくなっていく。

スポイル・スポート自体は本当にささやかな存在にすぎないのだけれども、「ルール」の存在するところや、「頑張るインセンティブ」が重要な領域では、大きな力を発揮することになってしまう。ちなみに、このスポイル・スポートを利己主義者と読みかえれば、なぜ危険なのか、なぜ排除しなくてはいけないのかを、『正直者はなぜ得をするのか』(藤井聡著)を読んでご理解いただけるかと。

国家が衰退するのは、「格差の固定」と「創造的破壊」の抑え込み

詳細は、『国家はなぜ衰退するのか』に書いてあるのだけれども、端的に言えば、財産を収奪する人がトップに立って、その人を引きずり下ろせないままだと、国家はいずれ破綻するのだ、と。難しい話に聞こえるけれども、「頑張って働けば自分の財産が増えるし、コミュニティの繁栄にも寄与できる」のと、「頑張って働いても自分の財産は増えないけど、コミュニティは維持される」のとであれば、前者は繁栄して、後者は衰退すると思うでしょ?

クーデターを起こしたくても、力を持たせないように「新しいこと」を封殺していく。「創造的破壊」が起こらないようにして、権力の座を守り続ければ、頂点に立った人間は楽しいに違いない。でも、その下にいる人たちは、ごくごく一部の支配者層以外、幸せにはなりにくい。やはり、「創造的破壊」を起こす、頑張って力を蓄えることを許される状態でないと、活発な経済活動も出来なければ、新しい技術も生まれてこない。国際的な競争に勝ちたければ、すでに成功した人たちには「創造的破壊への恐怖」を飲んでいただいて、新陳代謝を繰り返していかないといけない。

これがいわば、「ルール」と「規則」。ということは、格差を固定して富を集中させ、お金という力を握る人を一定層に絞り込み、下から這い上がるインセンティブをとことん奪っていけば、衰退できる。これから稼ぐ人より、これまでに稼いだ人がずーっと繁栄し続ける社会を保つように努力する。これ、どこかで見たことないですか?

レント・シーキングも地下経済も、一種のスポイル・スポート?

デフレ下や脱却局面で規制緩和をする、あるいは正規の経済活動の中に、一部資金が漏れていく地下経済の要素を取り入れていく。どちらも、格差を固定するためには優位に働く仕組み。また、企業の中、社会の中で若い人の意見よりもすでに財をなした人たちの意見を優遇する、変わらないことを是とし続けるのも、勝ち組と負け組とを固定化するのには優位な仕組み。逆進の課税を強化しようとするのも、下から這い上がってくる人を封殺するのには役に立つ。

これを続けていて、果たして「頑張るインセンティブ」が働くだろうか? 甚だ疑問。まともに頑張るより、目先の利益を追求して、理性に反発することであっても自分のために政治を動かす方が有利なんじゃないか。現支配者層に、手厚くお金が回り続けるように、教育も経済も政治も牛耳ったり、マスメディアも支配下に置いて、洗脳を続けていく方に入った方が生きて行きやすいんじゃないか、と。

クーデターの目を丁寧に摘んで、変わらないことを良しとする。あるいは、本当に正しいことを封殺して、イデオロギーを信じるように仕向ける。公平なルール、公平な議論を封じ込めて、ダブルスタンダードで支配者層に優位な状態をキープする。これでは、いつまでたっても後進国化は止まらない。

頑張ってもインセンティブが働かない。きちんと事実に基づいた意見を具申しても、訳のわからない理由で潰される。これでは、「新しい人たち」は頑張る意欲を失っていく。

グローバリズムなスポイル・スポートは、人類を滅ぼす?

日本国内、あるいは企業や一定規模のコミュニティの中も悲惨だけれども、世界中に根をはるグローバリズムも、約束事を成り立たせるために動いていない人たちがいて、それはそれは恐ろしいなと思っている。

パナマペーパーなんて、最たるもので。国際的なルールに則って租税回避をしてるから、規則は守っているんだけれども、「自分のために」が強く出過ぎ。群れを作って発展してきたホモ・サピエンスが、一定規模の群れを守るには所属した群れに対して維持する動きを取らないと。租税回避をやりすぎると、国という枠組みが成り立たなくなるし、周りへの配慮を欠いた行動を続けてしまえば、力だけが全ての社会に向かっていく。貧しい人たちはいつまでも貧しいまま、生きる意欲も頑張るインセンティブも見出せない日々を過ごすことに向かいかねない。

もちろん、貧しい人たちが貧しいままなのは、それなりの理由もあるのだけれども、わざわざ「そうなりやすい状態」を構築しているというのは、あまり良い趣味ではないとも思う。

幸い、単純な遊びとは違って単なるスポイル・スポートだけでは崩壊しないようにできているけれども、そのスポイル・スポートを1個ずつ潰していって、「真っ当に頑張ったらいいことがある(かもしれない)」状態を作っておかないと、人類の滅亡は早まりそうな気がする。

個人的にはまだまだ楽しみたいし、人類がどこまでいけるかも楽しみにしている。人の可能性を伸ばしていくためにも、また日本の可能性を伸ばしていくためにも、スポイル・スポートという穴を塞いで、「頑張るインセンティブ」の働く世の中にできないものかと考えてみたりはする。

兎にも角にも、理性に基づいた経済、生産活動、情報伝達に励むことと、「創造的破壊への恐怖」を受け入れてもらうこと。創造的破壊への恐怖を受け入れてもらうには、今よりは柔軟な思考を持ってもらうこととか、『母という病』、『父という病』に書かれているような個人的な心理の問題も見ていく必要があるんだろうな、とか。そういう諸々の面倒臭い行為を念頭に、一つ一つ取り組んでいかなきゃいけないのかなぁというのが、今の考え方かな。

執筆者プロフィール

長谷川雄治(はせがわ・ゆうじ)

物書きな作れるWebコンサルタント。
HTML/CSSのマークアップやWordPressのカスタマイズ案件を経験し、サービス構築やブランディング、サイト設計や戦略プランニング、各種原稿、書類作成まで担う。
独自色の強いコンテンツマーケティングの人という立ち位置も見出だしつつあり、不足しているものを補うべく、日々実践中。

2017.09.12

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