「HPは営業マン」、「HPで情報発信」への違和感を考えてみる

2018.11.18

割と最近も目にしながらも、なんとなく引っかかるというか、気になっていた2つのフレーズ。なぜ引っかかるのか、良い言い換えはないのかを考えていたところ、徐々に答えが見えてきたように思うので、オチも定めずダラダラと書いてみる。

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他人のことを一所懸命やっていると、ついついおざなりになってしまう自分のところのブログ更新。かなり久々なので、リハビリがてら取り留めもない話題を、深く考えることなくこねくり回してやろうと思います。

HPは、「24時間無休で働いてくれる営業マン」って本当か?

「なぜHPが必要なのか」や「HPをどう使えば良いのか」について、上のように回答していたり解説していたりする書籍、セミナー、ブログ、それから当該事業者のHPなどを、今もよく見かけるかと思います。

いわゆる「営業職」や「営業マン」の実態を100%把握している身ではないですが、よくできた(あるいはよく育て上げた)HPって本当にそう見えるんでしょうか?

営業マンの良いところは、「人である」という部分。営業スタイルによりけりですが、対面なり電話なりで柔軟にコミュニケーションできる部分、リアルタイムやリアルタイムに近い部分でレスポンスしてくれる部分じゃないでしょうか。制作する側としては必ずしも良いとは言えない「無理を聞いてくれる部分」、「無理を承知で交渉してくれる部分」も営業マンの良いところでしょう。

HPでは、そこまで柔軟な対応はできませんし、HPではリアルタイムなレスポンスは、通信速度などの関係もあって難しいでしょう。表情や声色のようなニュアンスを汲み取ることも難しく、事前に準備したメニューやプラン、HP上に記載したものを起点にやり取りするしかありません。

相談する余地もなく、表に出ていない商材については「あとは個別にお問い合わせしてください」で業務時間外はメールフォーム、では営業マンとは程遠い存在でしょう。Pepper君やSiriの方が遥かに営業マンに近いですが、「いわゆる人工知能」が載っている以上は当然と言えば当然ですけども。

よっぽど高度なシステムを組み込んでいない限り、「代わりに説明してくれるツール」、「呼び出しやアポイント調整に使えるツール」が関の山。パソコンやスマートフォンを立ち上げずに済むという意味では、チラシや書籍、駅の伝言板の方がいくらか役に立つでしょう。

「(アクセスなどを)分析すれば要望を把握できる(それに合わせて書き換えられる)」や「自由に回遊してくれるから自分で学んでいただける」というのは、今の話題からは少しはみ出るので、後述します。

HPは、「情報発信する」ためだけにある?

「HPやブログを使って情報発信していきましょう」というのも、飽きるぐらい見かけるフレーズ。今もまだまだ見かけるフレーズですが、そもそもHPやブログを使った情報発信って、どういうイメージをお持ちなんでしょうね。

「自分ではものすごいブログ記事を書きました」と公開ボタンを押した途端、野球漫画で見るような豪速球で読み手のもとにズバッと届いている感じなんでしょうか? あるいは読んでくれそうな相手の視界に、良い感じに存在感を示しながら侵入している感じなんでしょうか。多分、どちらでもないんですよね。もっとインパクトなく、もっさりした感じで、まるで決まったゴミ捨て場に新しいゴミを捨てるとか、海に浮かべる手紙入りペットボトルを一つ増やすとか、他にも似たようなものが山ほどあって、手に取るのも難しそうなところへそっとリリースするような感覚の方が、実態には近いんじゃないでしょうか。

「情報発信」というフレーズが持つ力強さというか、押しの圧力みたいなものはほぼ存在せず、華々しさもないのが実態。HPやブログを使うよりも、手書きのチラシや壁新聞みたいなものをコピーしてポスティングするなり、どこかに掲示した方が、よっぽど効果がありそうで、使い回しも効きそうな気がします。

HPやブログは安価に読んでおいてほしい文章や見ておいて欲しい画像、動画を認知してもらえるから「発信」につながっている、こちらから情報を提供できているのだから営業マンと言っても良い? 本当にそうなんでしょうか。

HPやブログでやるべきなのは、仮説検証

これは、ほぼ個人の意見ですが、情報発信したいだけ、プロモーションしたいだけなら何らかの広告を打つなり、ポスターなどの掲示物を展開するなり、足で稼ぐ営業活動をセミナーやイベント絡めて展開したりする方が早いし、上手くいけば効果も出やすい手法かと思います。ただ、相応のコストはかかりますし、本当に自分たちの取り組みが効果があったのかを検証するためのデータを正確にとるのは容易ではないので、アナログな活動を中心に「自分たちの商売が上手くいく状況、条件」を調べていくのはあまり費用対効果が良くないんじゃないでしょうか。

また、「発信」するためだけにHPやブログを活用して、アクセスなどの分析を全くしないとすると、それもまた賢明な取り組みとは言えないでしょう。著名なGoogleアナリティクスのタグを埋め込んでみたり、サーチコンソールを導入するぐらいなら、知識さえあればほぼ無料でできます。上手く活用する、精緻に分析する、正確にデータ活用をするのは訓練や専門家、それなりのコストも要しますが、ざっくり掴んでいくのはそれほど難しいことではないでしょう。

「HPやブログを育てる」というのは、こういった分析ツールを活用して、成約に結びつきやすい内容を検討したり、既存のデザインや文章を少しずつ作り替えたり、足りないコンテンツを拡充したり、逆に余計な情報を削除したり、整えていく、強化していく活動をさすはず。そうであるなら、「仮説検証」という観点抜きにHPやブログを運用しても、メリットはそれほど大きくなりません。

一方で、「データ分析」の部分にだけ引っ張られて、「仮説」を持たずに「ユーザーにフィットするサイト、ブログにすれば良いんだ」とテコ入れをし続けてしまうケースもチラホラ見ますが、それもやはりありがちな間違い。ゴールを見失った整形モンスターとか、コンサルタントが介入してボロボロになる老舗、みたいになりかねません。

大切なのは、きっちり「仮説」を組み立てておくこと。それから、仮説は仮説としてそれに沿わないデータや反応、イレギュラーな結果もしっかり拾い上げておくこと。両方できてはじめて、「自分たちの実現したかったこと」のヒント、それに近づいていく道を見つけることができます。

仮説検証を行うための観測気球、あるいはデータを取るため、そこから考えを広げるためのノート、言語化するためのメモなど。そういう受け身の道具、実験するための安価な試薬の側面も持っているのが、HPやブログじゃないでしょうか。こういうツールを駆使して、より大きく動ける印刷物やアナログな活動に活かして行く。戦略を組み立てるために、時に能動的に、時に受動的に使うべきツールのように思います。

HPへ辿り着く前に、ハラを決めているケースも増えてきた

「HPは営業マン、コンシェルジュである」みたいなところへ、もう一点、私見を加えるなら上の小見出しあたりでしょうか。

たまたまブログ記事やSNSをきっかけにサイトへ辿り着いて、他の記事やサイト内を回遊しているうちに、だんだん理解や興味関心が高まってきて、やがて問い合わせなり、注文なりに結びついてくれるんじゃないだろうか、と。そういう希望や願望を今も抱いているようであれば、「HPは営業マン」みたいにお考えいただいてても良さそうですが、実際は段々変わってきているんじゃないかというのが、個人的な意見です。

BtoBの場合はこの限りではないでしょうが、イマドキのユーザーさんのうち何割かは、検索キーワードやサイト名、サービス名などを思い浮かべた時点で、買うか買わないかの覚悟、ハラは決めた上でサイトへ辿り着いているんじゃないだろうか、と。その上で、買う理由、買わない理由を書かれていることや目に見えるもの、それら以外の部分からも感じ取って、次に進むか途中でやめるかを決めているのではないだろうか、と。

例えば、電化製品をウェブ上である程度調べてから、「あれが欲しい」と実際の店舗へ赴いて財布を開くか開かないかを判断する、お店の雰囲気が良い悪いから考える、店員の雰囲気が良い悪いで検討する、商品のディスプレイや店舗での値段を見てレジまで行くか行かないかを迷うようなイメージ。電化製品に限らず、欲しいもの、欲しい情報、とりたい行動へスムーズに辿り着けるか否かが勝負になっているケースというのはあるんじゃないでしょうか。

そして、こういうケースの時こそ、成約に至る率も高かったりします。余計な情報、余計な動線を用意せず、必要最小限で最後まで進めるように工夫してあげればそれで十分、というのが実態でしょう。

「そういうのは、リスティング広告とLPでやればいい」というご意見も分かりますが、余計な広告費をかけなくても、ユーザーがアクセスしてくるシナリオ、前提となる条件等々を明確に把握できていれば、分かりやすく交通整理をした上で、全てをフォローすることも不可能ではないはず。それを実現するための「仮想のハコ」がHPです。

急いでいる人のニーズにも応えられる、のんびり新商品を探したい人の要望も叶えてあげられる、長居したい人にはだらだらと店内を見て回ってもらっても良い「コンビニエンスストア」も存在しているので、そういう形を考えて実現して行くことは不可能ではないはず。

「HPは、POSレジ」あるいは「実験的な架空の売り場、販売員」

プッシュするイメージの強い「営業マン」や「情報発信するためのツール」ではなく、「情報を蓄積するためのツール」であったり、「架空の空間、その場を構成する人も含めたハコ」と捉えた方が、より現代的で、より正確なのではないでしょうか。

「24時間無休で働いてくれる営業マン」のようなキャッチーさやインパクトはないですが、いまだにこのフレーズや「情報発信だけ」を大事にしている方々には要注意ですよ、というところだけでも伝われば幸いです。

この業界は秒進分歩。2年も3年も前の用語を大事に抱えるのではなく、上手に変化を捉えて、再定義する努力を惜しまずにいたいですね。

執筆者プロフィール

長谷川雄治(はせがわ・ゆうじ)

物書きな作れるWebコンサルタント。
HTML/CSSのマークアップやWordPressのカスタマイズ案件を経験し、サービス構築やブランディング、サイト設計や戦略プランニング、各種原稿、書類作成まで担う。
独自色の強いコンテンツマーケティングの人という立ち位置も見出だしつつあり、不足しているものを補うべく、日々実践中。

2018.11.18

2018.11.18

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