「プロ」という用語は難しい

2018.11.22

国家資格や免許制度のない業種、業界。あるいは、技量の良し悪し、仕上がりの良し悪しを素人目に判断するのが難しい世界における、「プロ」という用語の難しさ、見極め方の難しさなどを、毎度のごとく落ちも考えずに書いてみます。

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一口にプロといっても、ピンキリの差が激しい

誰がどう見ても超一流、後にも先にも現れることのない大天才、トッププレーヤーのうちの一人という人もプロだろうし、その仕事で飯を食っている、その業種についているという人も一種のプロと言える。華々しい実績を掲げた人もプロだろうし、地味で目立たないバイプレイヤーだけど、しっかり世の中を支えている人もプロだろう。

資格試験や免許制度、あるいはハードルを乗り越えないと参入できないラインがハッキリしている業界や業種であれば、その線の内外でプロかそうでないかは明確に切り分けられる。その一方で、純粋な技術力やセンス、実力や実績がモノを言う場合、プロじゃないのにプロ以上のアマチュア、玄人並みの素人が存在するケースもある。

手塚治虫先生のブラックジャックのようなモグリのケース、将棋の世界で奨励会の年齢制限に引っかかったけど特例でプロ棋士になる例とか。武士より強い僧兵とか、格闘家より喧嘩の強いステゴロとか。アーティスティックな分野や、他のエンターテインメントの世界でもそう言う方はいらっしゃるのではないでしょうか。

完全な素人からすると、プロとしては一線を退かれた方や、ライセンスを獲得して活躍されたことがある経験者なんかも、プロといえばプロでしょう。実践のプロ以外に、研究者的なプロの方もいらっしゃるでしょうし、専門家としてとことん極めていらっしゃるプロもいることでしょう。

中には、口先だけの方、「プロと宣言したからプロなんだ」という方や、「経験者だからプロなんだ」といいつつ、端っこの方だけ関わっていたような方もいるでしょうし、華々しい実績を掲げたうちの一人として名前を連ねていたとしても、お飾りとして名前を使ってもらったケースだったり、本当に末席の末席でたまたま名前を入れてもらったケースもあるでしょう。

「トライアウトは受けたことがある、受けられるレベル」人が、ハッタリとしてプロだとブラフをかますのはまだマシ、全然何も身についていないのに、「これから勉強していくんです」とか「あなたを材料に一緒に学んでいきましょう」みたいな詐欺や詐称に近いの自称(以下の)プロもチラホラおられます。

Web業界やクリエイティブな界隈は「プロさ加減」が見極めにくい

業界に関する資格や関連企業や団体が主催する民間資格、認定試験もあるにはあります。それが、スキルや知識に対する一定の保証になるケースもあります。また、何らかの受賞経験や実績、作ったものを見ていけばおおよそのレベルを把握することも可能でしょう。

中には私のように、そういうものを全く取りに行っていない方や、物凄いスキルを持っているのに表に出していない方もいらっしゃいます。そういう方の場合、「何ができるのか」はその人の自己申告やポートフォリオ、ポートフォリオを見ながらの質疑応答で読み解いていく他ないでしょう。

この判定、判断基準が非常に難しい。正解とされるものがある程度ハッキリしている技術的な要素や、テクニック的な部分は教科書的なものや検定試験、模範例との比較で加点したり減点したりも可能です。しかし、デザイン的なものやセンスを問うもの、マーケティングやブランディング、プロモーションといった知識やノウハウ、経験値が問われるコンサルティングの領域は、一気に推し量りにくくなります。

当人の口八丁手八丁が上手かったり、ハッタリや騙しの技巧が凄かったり。あるいは、その人自身が本当に凄いと自己暗示をかけていたり、人の実績も自分の実績だと言い張れるようなメンタルだったりすると、プロさ加減を上手く見極めきれず、口車に乗せられて危ない目に遭う、半分騙されたみたいになってしまうというのも、ありがちなケースでしょうか。

クリエイティブスキルも、成果物をよくよく見ていけば力量というのはハッキリ出ていたりしますが、それを業界外の方、見る目が養われていない素人の方が見た場合、何が良くて何が凄いものか、簡単には判断できません。「著名な誰々が〜」とか「知人の何とかさんが〜」みたいなところを信用してしまって、偽物をつかまされてしまう、真贋が見抜けずに無駄な投資をしてしまう、騙されたままの日々を過ごしてしまう、という事例も色んなところに転がっているのではないでしょうか。

「プロ」は動き方、振る舞い方、素材の活かし方が違う気がする

Web制作やライティング、コンサルティングなどで飯を食っている身分ですが、プロと言い切れるほどのプロではなく、素人と言えるほど素人でもない位置にいると思っています。Web系のクリエイティブな部分、Webサイトの構築やコーディングからコンテンツの部分、マーケティングがらみの部分しか見ていない立場ですが、「プロっぽい人」と「そうでない人」を分けるのは主に小見出しの要素じゃないかなぁ、ぐらいは言って良いのかな、と。

プロっぽい人は、機材がどうのこうのとか、素材の質だけをどうのこうとはあまり口にされない気がします。プロっぽい人は、華やかでない部分にこそ目をつけて、使えるものすべてを使って完結しようと動くように思います。プロっぽい人は、何気ない部分にフォーカスし、プロっぽい人は一見危なさそうに見える行為も、何事もなくやり遂げておられる気がします。

動きの一つ一つが洗練されていて、その振る舞いを誰かに誇るために動いているのではなく、最終的に生み出されるもののために集中し、短い時間で高品質なものを、嫌味のない仕上がりで届けてくれる。スマートかつ流麗で、どんな素材もきちんと活かし、危険なツールや薬品も細心の注意を払って安全に使い切る。道具は極力選ばず、使い慣れた必要最低限のものを愛用している人。

そして、その一挙手一投足、言葉にしない部分、ハッキリとは目に見えない部分にも、何らかのメッセージ性や哲学、心配りや優しさなどを感じさせてくれるような人のことを、プロと呼ぶんじゃないかなぁと勝手に思っています。

「プロじゃない」人は、やっちゃいけないこと、自己責任の範疇が分かっていない?

口先だけの人、プロを名乗るなら最低限身につけておいて欲しい知識や技術、責任感を持っていない人が、プロのふりをしてプロジェクトに混ざってしまうと、その時点でプロジェクトは悲惨なものになるでしょう。

同じ業界のプロ同士なら持っていそうな、共通の認識や暗黙の了解が通用しない。押さえておくべき勘所が分かっていない。プロなら問題なく扱えそうな危険物、取扱注意のツールを上手に扱えない。分かりやすい手法、誰でも簡単にできる手段を選んで、後から発生するコストや手間、クライアントやエンドユーザーさんへの影響を想像できない。自分で言ったこと、やったことに最後まで責任を持たず、誰かに責任を転嫁して回ったり、他の変な理由を引っ張り出して問題をうやむやにする、など。

何をやったら危ないのか、何をやったらもったいないのか、何をやったら相手に対して、世間に対して失礼なのかが分かっていないと、一緒に手を取り合って仕事をすることなんてできませんし、その結果傷つくのは、一緒に仕事をする人たちや「プロだと」言い張ったその人自身。自分を守れないのに、「プロ」とか「できる」とか簡単に口に出してはいけないと思います。

ハッタリとして口にしちゃったり、「やればできる」と思って「できます」と手を挙げること自体が悪いということではなく、やるからにはハラを括る、自分の言動に対して責任を持つ姿勢ぐらいは持っておいて欲しいなと。それがなければ成長もできませんしね。

「プロ」を名乗るなら信用を。「プロ」と呼ぶなら責任を

技量の差やプロ度合いの差が激しくても、プロを自称するのなら、信用できる存在であって欲しいですね。あるいは、信用されるように努力をしていただきたい。お金をやり取りするからとか、契約の有無とかそういう話ではなく、心意気の問題、人としてどうあるかの問題として。また、自分以外の誰かを「何かのプロ」と呼ぶのなら、それに対して多少なりとも責任を持つようにしていただきたい。

国家資格や認定試験、免許制度のある業種や、免状、段位等がハッキリしているものなら、それを保証に「プロ」と呼ぶのは構いませんが、目に見える基準のない業界、業種の場合、第三者が気軽に「何とかのプロ」というのは控えたほうがいいでしょう。「自称しているから」とか「そういう仕事をしているから、プロと呼んでも差し支えない」というのは、時にとんでもないトラブルを招きかねません。

同じ「プロ」でも、幅があります。外から見て「プロだ」と思っても、専門家から見れば「とんでもない素人」というケースも多々あります。それを、あなたの判断だけで、あるいは近しい人たち、自分が信用している人たちの価値基準だけを頼りに「プロかどうか」を軽々しく決めてはいけません。

それを信用して誰かがトラブルに見舞われた場合、あなたは責任が取れますか? あるいは、責任を取るつもりがありますか? どんなことが起こっても、自分は最後まで責任を持つ、責任を持てると判断するものに対してだけ、「プロかどうか」を口に出して良いでしょう。それぐらい慎重になった方が賢明ですし、そうやった方が、本当のプロや業界、産業を守ることにも繋がります。

他人にも、自分にも、分相応の言動を守りたい

自分がよく分からないこと、専門外のことには外側から口を挟まないのが賢明でしょう。外から見れば危険なもの、取扱注意のものを扱っているように見えても、何をしているか分からない、どう作用するのか分からないなら、何も言わないで専門家に委ねましょう。

自分がよく知らないこと、勉強不足なことも、知ったかぶりをしない。注意書きまでよく読んだ上で、理性的に相手と向き合う。相手を尊重しながら、自分の意見もぶつけてみたり、議論する。そういう礼節を守った立ち居振る舞いを、常日頃から意識していたいなぁと。

プロという言葉の持つ意味、言霊みたいなもの、影響力にも想いを巡らせたところで、この記事を締めようかと思います。いやぁ、本当に「プロ」という用語は難しいですね。

執筆者プロフィール

長谷川雄治(はせがわ・ゆうじ)

物書きな作れるWebコンサルタント。
HTML/CSSのマークアップやWordPressのカスタマイズ案件を経験し、サービス構築やブランディング、サイト設計や戦略プランニング、各種原稿、書類作成まで担う。
独自色の強いコンテンツマーケティングの人という立ち位置も見出だしつつあり、不足しているものを補うべく、日々実践中。

2018.11.22

2018.11.22

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