Vol.7 「サブスク」について考えてみる

2019.07.22

ブームというには、すでに落ち着いてきた感のあるサブスクリプション。今更名もない個人が語る余地なんて何もないんだろうけど、あえて拙い考えをまとめてみる。最近読んだ、川上昌直氏の『「つながり」の創りかた』(東洋経済新報社)も参考に、思考を広げてみよう。

この記事は 約 9 分で読めます。

「モノ(プロダクト)を売る」からの脱却

モノからコトへ。売り切りから、関係性作りへ

「サブスクリプション」について、詳しくは『「つながり」の創りかた 新時代の収益化戦略 リカーリングモデル』(川上昌直著 東洋経済新報社。以下『「つながり」〜』)や、私は未読だけれども、『サブスクリプション 「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル』(ティエン・ツォ他著 ダイヤモンド社)など、「サブスクリプション」で引っかかる書籍を読めば、なんとなくお分かりいただけるだろう。

読むのもメンドくさい、という方には「月額定額制サービス」と思っていただければ十分でしょう。通信費や、水道や光熱費といったライフライン、新聞や雑誌の定期購読なども、サブスクリプション(あるいはその類型)と見ていいでしょう。

『「つながり」〜』の方では、サブスクリプションに近いサービスとして、フリーミアムやリース、プリンターやカミソリのようなレーザーブレイドなども取り上げられています。モノやサービスをその都度「売り切り」するのではない形としては、交通機関の定期券なんかも、形は違えど「リカーリング」に近いようです。

サブスクリプションの特徴としては、新聞雑誌の定期購読やウォーターサーバーの水配達などとは異なり、購入後のユーザーとただ関係を継続するだけではなく、ユーザーフォローをいくらか手厚くするところでしょうか。サービスごと、事業者ごとにその内容や手厚さは大きく異なるので、必ずしもこの通りとは限りませんが……。

IT系サービスでチラホラ広がり始めていたサブスクリプションですが、近年では飲食や衣料などでも扱う事業者が増え始めていて、探してみれば意外なところに「サブスク」を見つけられるんじゃないでしょうか。

「サブスク」をやるにあたって、重要なポイント

質のいいサービス、手厚く素早いカスタマーサポート、繰り返し利用の頻度

3つ全てが揃わないと「サブスク」ができないとは言わないものの、ある程度高い水準にしておかないと、「サブスク」に切り替えるだけの利点はない、ネガティブな評価を高めるだけ、旨味の少ない売り方で、本来の顧客とは違う層を引き込んでかえってコストがかさむ羽目になるでしょう。

物が売れない、サービスが売れないのを、価格だけの問題、料金体系だけの問題と踏んで「サブスク」を導入してみても効果は薄いでしょうし、十分なサポート体制を作らないまま、サービスに魅力を感じた未熟な顧客を引き込んだところで、「サービスが良くなかった」と言われるのがオチ。それほど繰り返し使わない、あるいは顧客とやりとりする機会が少ないのにサブスクにしてしまうと、「高いお金を払ってるだけ」にもなりがち。

どれも下手にやらない方が、ベターでしょう。他にどんなところを気をつけた方がいいのか、どう考えた方がいいのかなど、ここで詳しく取り上げることはしないので、ぜひ「サブスク」系の書籍、例えば『「つながり」〜』あたりをご一読されることをお勧めします。

「サブスク」が浸透しつつあるのは、消費者のトレンド、マインドの変化から

広告を見せられて、選ばされるのがメンドくさくなっているのでは?

なぜサブスクなのか。その真っ当な理由は他の方々、関連書籍でもすでに触れられていると思うので、ここからは独自の意見というか、偏見を。サブスクにする理由、サブスクを選ぶ理由は、一つ前の記事でも触れた「マーケティング」や「メディア」に対するトレンドの変化、マインドの変化が大きいんじゃないだろうか、と。

日々の生活の中で、決して特別な瞬間でなくても、「選ぶ」瞬間って、多々発生しています。朝ご飯なにしようか、とか。喉乾いたから、飲み物買おうか、とか。晩御飯の献立、そこで使う調味料は同じ醤油でも、Aにしようか、Bにしようか。今日着る服、明日着る服、靴下やネクタイはどうしようか、とか。家の中で、何らかのお店の中で、あるいは移動中や街の中で、あるいはインターネットやSNSを見ている間で、気がつけば広告や情報が散りばめられていて、「選んでくれ」や「消費しろ」とメッセージを浴びてます。

それが楽しいこともあるし、助けになることもありますが、余りにも量が多すぎたり、露骨なメッセージや質の悪い宣伝に触れたりしてしまうと、気分が悪くなったりしませんか?

少なくとも自分は、集中して考えたいときや自分のことについて想像を膨らませたいときは、余計な情報に触れたいとも増やしたいとも思いませんし、無遠慮に情報を提示されたくもありません。そこに「買ってくれ」とか「選んでくれ」というメッセージが込められたりしていると、精神的な平穏を乱されることがあります。

何でもない毎日、延々と繰り返されるシーンにおいて、毎回選ぶ、あるいは選ばされるのがシンドイ、あるいはメンドくさい。選ばなくてもいい、その都度、購入にまつわる色々を考えずに済むなら、それでいい。サブスクを選ぶ人全員が、そういう思考だとは思いませんが、どちらかというと消極的なスタンスで、メンドくさくない「サブスク」を積極的に選びに行っている人も、多少なりともいるんじゃないかなと考えています。

特別な瞬間、ハレの瞬間なら、一所懸命考えて、広告や情報に触れて選んだり考えたりは全くやぶさかではないですが、頻度の多いいつも(=ケの瞬間)でそこまで考える余力がない、考えずに済むなら楽をしたい。楽をやるのにピッタリな要素を持っているのが、「サブスク」。最初に契約する瞬間にだけ一所懸命考える、あるいは料金体系が変わる瞬間にだけ考えて、あとは自動的に商品やサービスを利用できれば大満足。消極的でも豊かな生活を送りたいと思っている人に、実は向いてるんじゃないか、とも思っています。

「サブスク」するなら「物語性」で選ばれたい

プロダクトも便益もジョブの解決も、全部うっちゃる。

サブスクリプションの解説、あるいはリカーリングモデルの説明については『「つながり」〜』は非常に良い書籍だと思いましたが、ユーザートレンドの変化というか、ユーザーに対して提示するものについては、「ちょっと一昔前かな」というか「考えていることが旧態依然としているかな」と。

一つ前の記事でも触れましたが、個人的に引っ掛かりを感じているのが従来通りの「マーケティング」や「メディア」であり、一方では「ビジネス(モデル)」。「サブスク」でやろうと、なにでやろうと「現代資本主義」の中で何かをやる、提示するのであればそれは基本的に「ビジネス」の形になるでしょうし、人が介入する以上は利益性やどれだけのお金を動かすか、そろばんを弾く必要もあるでしょう。「買ってもらう」、「ユーザーとのエンゲージメントを得る」、「事業を継続させること」も重要なんだけれども、それを全面に推しすぎるのも、なんか違うのかな、と。

そもそも、本当に今の一般ユーザーは、「ジョブの解決」を求めて商品やサービスを求めている、あるいは探しているのでしょうか。「生活のアップデート」や「利便性の向上」を考えているユーザーは、そこまで新しい商品、今まで気付きもしなかった「ジョブの解決」を欲しているのでしょうか。仮に正しかったとして、もっとピッタリくる選択肢が出て来たら、もっと魅力的でコスパがいいものが出て来たら、決め手が金銭で置き換えられるものでしかないのなら、引き留めることって、難しくなりません?

「サブスク」に限らず、今後の経済活動、あるいはユーザーとの関係構築においては、継続的に関係を構築すること、長いお付き合いをある程度織り込んだ方が賢明で、関係が途切れること、関係が終了してしまうことを、いの一番に避けるべきだと思うのですが、なぜか選ばれるポイントを「置き換えが可能なもの」(=現代資本主義的な「価値あるもの」)にしてしまう。これでは……、と思いません?

(超)ロングエンゲージメントを念頭に置く、「LTV」や「サブスク」も考えてユーザーと向き合うのなら、他と絶対に差別化できるもの、自分たちしか持ち得ない「物語性」や「世界観」、そことマッチしている「メッセージ性」で選んでもらうようにした方が、間違いが生まれにくい上に、変なコストをかけなくても差別化しやすい、違いを強化しやすいはず。

著名なブランドも、メッセージ性やブランド性、世界観やこだわりといった部分で選ばれている、ユーザーに対して守るべき部分、提供し続けるものをきっちり見定めているのであって、ここを見誤って商業主義に走る、現代資本主義に合わせ切ってしまえば、どんな老舗であっても簡単に崩れていく。

日本国内の大手企業がダメになるのも、大抵そういう部分。プロ経営者(笑)では、そこが分からない。置き換えの効かない価値、現代資本主義ではそろばんで弾けない部分を見極めきれない。泥臭い部分や汗臭い部分、動物的な感性がなければ掴みきれない部分、見えない部分、文字になっていない部分こそを選んでもらう、伝えるようにする。

そこをしっかり考えていかないと、サブスクだろうが何だろうが、これからの時代、正確にはこれまでの時代でも、長く生き残っていくというのは難しいんじゃないでしょうか。

情報性、居心地の良さで、サブスクを展開する

濃厚な物語性、独自の世界観で積極的に、消極的な選択を引き寄せる

ずっとそのサービス、商品を楽しんでいたい、味わい続けていたい。そう思ってもらう。

その雰囲気の良さ、空気感の良さ、見える部分と見えない部分の合わせ技がいかにいいかを積極的にアピールしつつ、消極的なユーザーを引き込むようにする。居心地の良さを保ち続け、厚みを増すように進歩し続ける。そういうスタンス、姿勢で「サブスク」をやっていくのが、ベストな気がします。

見えるもの、手で触れられるもの、わかりやすい部分のモノやUIも高品質にしつつ、見えにくい部分、手ではさわれない部分、分かりにくい空気感の部分であるコトやUXも高いクオリティーを目指す。UIとUX、モノもコトも追求して、選ばれ続けるようにする。それが、今からの「間違いないやり方」な気がしますが、いかがでしょう?

流石に長くなって来たので、今回はこの辺で。

執筆者プロフィール

長谷川雄治(はせがわ・ゆうじ)

物書きな作れるWebコンサルタント。
HTML/CSSのマークアップやWordPressのカスタマイズ案件を経験し、サービス構築やブランディング、サイト設計や戦略プランニング、各種原稿、書類作成まで担う。
独自色の強いコンテンツマーケティングの人という立ち位置も見出だしつつあり、不足しているものを補うべく、日々実践中。

2019.07.22

2019.07.22

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