Vol.24 「迷うこと」を忘れたくない

2019.09.01

このカテゴリーで扱うか、雑記として取り扱うか微妙なラインのネタだけど、多分こういう要素も今考えていること、まとめておきたいことの根底にはいくらかあるので、バリエーションのひとつ、足がかりの一つとしてあえてここで綴っておこう。

この記事は 約 4 分で読めます。

『迷うことについて』(レベッカ・ソルニット著 左右社)

2019年5月初版、「迷うこと」を取り上げた半自伝的エッセイ?

翻訳は、東辻賢治郎氏。哲学的な書籍、人文学的な切り口の社会史、思想史。あるいはその手の詩集かと思いきや、もっとゆるっとふわっとした雰囲気の書籍。著者であるレベッカの思考、半生を辿るような文章を少しずつ追いかけていくようなエッセイといったところか。

ギラギラとした気持ちで、鼻息荒く「何かを学んでやろう」と読むものでもないし、文学として楽しもうという趣旨にも微妙にそぐわない書籍だろう。なんとなく読んでみて、なんとなく気に入ったところが何箇所かでもあればいいような、そういうタイプの本な気がする。

街で迷う、分別のある大人になってからも迷子になる。いずれも意外と難しい

未知、無知の世界へ無自覚に誘われるのは、訓練が必要になる?

自分から知らない世界に入って行く。危ないと分かっているところへ後先考えずに踏み込んで行く。知らないものに囲まれて、どちらから来て、どこへ帰ればいいか分からなくなる。手がかりを失って、途方にくれる。

その上で、無事に元の世界へ戻っていけるか。迷子になっても元通りに戻れるかも、「迷う」には大切なこと。

資本主義的には、無意味で無価値な行為だろう。わざわざ時間をかけて、なんらかの目的を果たすためでもなく、様々なリソースを食いつぶして、迷い込んだ先の世界をただ楽しんで、あるいはただ怖がって帰ってくる。そこに、明確な学びがあるかどうかはどうでもいい。

様々なものが明確になって行く世の中。安全な社会が広がって行く現代。迷っている暇もなければ、迷えるだけの空間も減りつつある? 迷うこと、迷子になること。いずれも案外難しい。そして怖さや危なさもあるものの、それをやらなきゃ味わえないものも、確かにあるのが迷うということ、迷子になるということじゃないだろうか。

知的な分野で彷徨う、迷子になる。人生の中で生き方を迷ってみる、日々の過ごし方を見失ってみる。特定の方向や目標と、目印になるモノを失って、ただ立ち尽くしてみる、未知や無知と戯れてみる。今の世の中、特に日本でやるのは困難だろう。

そんな現代で迷えた人、迷子になった経験がある人というのは、何かの才能がある人、あるいは何かを持っている人、なのかもしれない。

隔たりを表す「青」

「青」に関する著者の述懐、「隔たりの青」という章題がいい

青は迷子になった光の色。わたしたちまで届くことなく、その旅路をまっとうできなかった迷ってしまった光。この世に美を添えるのはその光ーー。本書の「第2章 隔たりの青」(P36〜)はそうやって、「隔たりの青」の解説から始まる。

青は隔たりの向こうにある内面の色、「自分のいない場所の色」、「到達することのできない色」。『「望みは無限の隔たりに満ちている、だから憧憬(ロンギング)という」(詩人ロバート・ハス)。青は決して到達できない隔たりへの、』(37P 1行目より引用)色。

隔たり自体、隔たりの青、決して手中にはできない青色の美しさを大切にできないだろうか、と著者は述べる。

青は空の色であり、海の色であり、遠くの山にかかる大気の色。そして、皆川亮二の漫画『ARMS』によれば、青は憂鬱の色であると同時に、希望の色でもある。頭をクールダウンさせ、心を落ち着ける効果も持つ色だけれども、それだけに「手が届かない」要素も持ち合わせている、というのが凄くいい。

手に入らないから憂鬱にもなり、手に入れられないから希望たりうる。望みを満たすべく、隔たりの青を取っ払ってしまえば、人生は途端につまらないものになる。青の美しさ、儚い青をもっと愛でるぐらいの心を持ちたい。

「隔たりの青」と称された章は、この後何度か差し込まれる。数々のエピソード、文章から、一つでもお気に入りの部分を見つけられれば、非常に良い読書体験となるのではないだろうか。私の深入りは、一旦ここで止めておこう。また、ゆっくり読む時が来たら、じっくり腰を据えて紐解きたい……。

執筆者プロフィール

長谷川雄治(はせがわ・ゆうじ)

物書きな作れるWebコンサルタント。
HTML/CSSのマークアップやWordPressのカスタマイズ案件を経験し、サービス構築やブランディング、サイト設計や戦略プランニング、各種原稿、書類作成まで担う。
独自色の強いコンテンツマーケティングの人という立ち位置も見出だしつつあり、不足しているものを補うべく、日々実践中。

2019.09.01

2019.09.01

Loading...
Facebook Messenger for Wordpress