【壊乱】#001

2016.03.12

竜退治をテーマにしたオリジナル小説。
第1話。

この記事は 約 2 分で読めます。

,

 雨が降り始めた。
 路面を叩く細かな雨粒。かすかな雨音は、急ぎ足で行き交う人々にかき消されてしまう。
「とうとう、降り出しちゃいましたね」
 中庭に続く廊下から、女性が入ってきた。胸元には揃いのロゴが入った、白いタオルを抱え、左手にある事務室へ入っていく。
「お茶入れますけど、フラムさんもいかがです?」
 受付用の小窓を開けて、僕の方を見た。
「ありがとう、エマちゃん。でも、」
 隣に置いたヘルメットを膝の上に抱え、エマを見やる。
「もう行くからさ」
「まだ、降りそうですけど」
「通り雨っぽいし、今のうちに」
 待合のソファから腰を上げる。
「そうですか。じゃあ」
 エマは、タオルの山から一枚取り、サッと畳んだ。事務室から出てきて、タオルを差し出す。
「持って行ってください。どうせ、濡れながら行くんでしょ」
「うん、まあね。ありがとう」
「じゃあ、いってらっしゃい」
「行ってきます」
 タオルを受け取って、カバンに入れる。駐輪場に足を向けかけて、見送ってくれているエマの方を振り返る。
「あのさ、ブレイズでいいよ。昔からよく知ってるんだし」
 エマは微笑んで、「はい」とつぶやいた。
「じゃあ、また」
 軽く手を上げて別れを告げ、駐輪場に向かう。停めておいた魔導木馬を起動させる。木馬の背には、エマの名前とそれを打ち消すように刻まれた、1号の文字。その文字を覆うようにまたがり、ヘルメットをかぶる。
 魔導木馬の頭を駐輪場の外へ向け、右手のアクセルを入れる。魔導木馬は独特の浮遊感で浮き上がり、地面スレスレを滑るように進み始めた。

執筆者プロフィール

長谷川雄治(はせがわ・ゆうじ)

物書きな作れるWebコンサルタント。
HTML/CSSのマークアップやWordPressのカスタマイズ案件を経験し、サービス構築やブランディング、サイト設計や戦略プランニング、各種原稿、書類作成まで担う。
独自色の強いコンテンツマーケティングの人という立ち位置も見出だしつつあり、不足しているものを補うべく、日々実践中。

2016.03.12

2018.05.02

Loading...
Facebook Messenger for Wordpress