【壊乱】#002 【壊乱】#002

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 雲の切れ間から陽が差し始めた。肌に当たる霧雨は冷たいが、体温でそのうち乾くだろう。雨足が強くなる様子もない。通り雨だろう。
 馬車が通るには狭い石畳の緩い下り坂を、人の間を縫うように魔導木馬を走らせる。雷の力を封じ込めた魔導石は、多少の雨でも問題ないようだ。
 丘の上の霊園へ続く通り。色鮮やかな花をならべた店、果物を積み上げている店、焼きたての菓子を売る店、喫茶店が並んでいる。いろんな匂いを身にまとい、ばたつく店先を通り抜ける。
 雨ざらしになっている作りかけの住居、看板だけは古いのに建てたばかりの真新しい店も珍しくはない。「移転しました」と張り紙をしてある食堂だった建物には、壁に開いた穴を木材で塞ぐ程度の修理しかなされていない。
 足元の石畳も、所々に大きな力で壊された跡が残っている。よそ見をしながら、濡れた路面、窪んだ足元につまずいたり転んだりしている人も、かつてに比べれば、少なくなった。
 人混み、というには少ない人を掻き分け、のんびりと魔導木馬が進んで行く。坂道が終わる頃には、馬車やバスが行き交う大通りになる。
 大通り沿いは、綺麗に背の低い建てかけの建物が並び、歩道にはある植樹スペースには、木々が植わっていない。カッパを着込み、苗木を植えている職人は、わずかに汗をかいているようだった。
 大通りに入ると、真正面には巨大な門と城とが見えてくる。その門は、木材の門扉が、一枚分が色違いのものに、もう片方の上の方が鉄のつぎはぎが当てられている。
 自動車やバス、馬車に混じり、片側2車線の大通りをまっすぐ進む。さっきまでの甘い匂いや花の香りが、埃っぽい匂いや排気の匂い、馬の獣臭に変わる。
 城前の交差点を渡り、誘導の軽装兵に従い、跳ね橋前の広間の右手にある駐輪場に魔導木馬を停める。ヘルメットは魔導木馬の頭にひっかけ、タオルで肌の水滴を適当に拭っていると、雨は徐々に強くなってきた。城前の停留所でバスから降りてくる人たちは、小走りに跳ね橋前の小屋へ入っていく。
 駐輪場の屋根伝いに、その小屋へ向かう。小屋の外で名簿に名前を記入する。
「ブレイズ・フラムさん。ああ、元騎士団員さんね。じゃあ、コレ付けて」
 受付の職員は、小窓から青いプレートを差し出した。受け取って胸につけていると、職員はドアを開けて中へ招き入れてくれた。
 中には、同じように青いプレートをつけた見知った顔がいくつかと、白いプレートをつけた城内職員が数人、跳ね橋が降りるのを待っていた。

長谷川 雄治

長谷川 雄治はせがわ ゆうじ

2013年から、仮面ライターを掲げて活動中。
物書き&Web制作、コンサルティングが本業だと思い込んでいる、ただの変な人。