【壊乱】#003 【壊乱】#003

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 青いプレートをつけた面々は、おおよそ中肉中背か筋骨隆々の男ばかり。例外の人物は、丸い眼鏡をかけた痩身の男。周りの男に比べると、頭一つ背が低い。眼鏡の奥の目をちらりとこちらに向けるも、すぐさま興味がなさそうに視線を逸らした。
 背中のドアが開き、雨粒混じりの冷たい風が身体に当たった。
「ちょっと、すみません」
 カッパを着た男が小屋の中に入ってくる。ドアの前に突っ立っていた僕は、「ああ、すみません」と応えて、向かいの壁に寄りかかって立っていた眼鏡の男の方へ歩を進めた。
 小さな振動で地面が揺れた。跳ね橋が下りたようで、カッパを着た男が跳ね橋へ続く扉を開けて誘導を開始した。バラバラに小屋にいた人たちは、二列に並んで、順番に跳ね橋の方へ歩いていく。
 眼鏡の男と並んで、跳ね橋の方へ向かう。小屋の外も跳ね橋ギリギリまで庇が続き、人用の跳ね橋には屋根が付いている。
「元気にしてたか?」
「うん、まあ。アレンの方はどうなんだ? 少し痩せたんじゃないか」
「そうか? まあ、運動量が減ったからな。筋肉は落ちたかもしれん」
 アレンは、外套の下から腕をのぞかせる。以前とさほど変わったようには見えないが、うっすらと脂肪をまとったようだ。
「筋肉よりも、視力が問題だよ。レンズがどんどん分厚くなる」
「本の読みすぎだよ」
「まあな」
 アレンは、こちらを向きながら跳ね橋に足をかけた。
「そのおかげで、お前にやったアレが動くんだけどな」
 駐輪場に止めた魔導木馬がわずかに見える。
 僕も、跳ね橋に移り、城に向かう。
 跳ね橋の下は大きく掘り下げられており、かつては城内向けの野菜を育てていた農場や庭園が広がっていた。今は、魔獣の体液で赤黒く染め上げられている。魔獣の死骸はすべて撤去されたものの、洗浄はこれかららしい。やや激しさを増した雨でも、こびりついた体液が落ちる様子はない。
「おい、早く行け。後ろが支える」
「ああ、すみません」
 アレンの横を歩いていたつもりが、いつの間にか間が開いていた。小走りでアレンの横に急ぐ。
「ああ、そうだ。アレな、さっきみたいな霧雨程度ならいいが、魔導石に水がかかるとどうなるか分からんぞ。水が跳ね上げるような雨なら、使わないほうがいいかもな」
「分からんって?」
「一人で感電死、とか?」
「ええ、マジ?」
「冗談だ、冗談」
 跳ね橋を渡りきり、城内に入る。白いプレートをつけていた人たちはそれぞれの職場に向かい、青いプレートをつけた男たちは、城内の案内に従い、全員が待合室に足を向けた。

長谷川 雄治

長谷川 雄治はせがわ ゆうじ

2013年から、仮面ライターを掲げて活動中。
物書き&Web制作、コンサルティングが本業だと思い込んでいる、ただの変な人。