【壊乱】#008

2016.03.12

竜退治をテーマにしたオリジナル小説。
第8話。

この記事は 約 3 分で読めます。

,

「すまないな、ブレイズ。あいつも、悪い奴じゃないんだが、口の利き方ってのがな」 
「ああ。分かってるよ、フューリィ」
 腰回りのカバン、宝剣を抑えて立ち上がる。
「そういやお前、白髪なんてあったか?」
 ドルトンは、フューリィの頭に目を止める。青くすら見える、艶やかな黒髪に、一本白髪が混ざっていた。
「えっ、嘘」
「ほれ、ここ」
 ドルトンは、白髪をつまんで無遠慮に抜くと、フューリィの目の前にかざした。黒々とした毛が数本、太い指の間からすり抜ける。フューリィはドルトンが触れた箇所に手を置いた。
「ちょっ、勝手に抜くなって」
「細かい、細かい。そんなんで、バカ王子の下についてたらすぐに白髪だらけになるぞ。もっと、ドーンといけよ。副隊長」
 ドルトンは豪快に笑いながら、フューリィの背中を叩いた。その強さにフューリィは顔を歪める。
「せ、正式な辞令になれば、王国からの全面的なサポートもつく。確かに難しいが、悪い話ではないと思う。もし、話を受けてくれるのなら、一緒に連れて行きたい仲間とともに、明日の正午、城へ来てくれ」
 フューリィは、目元に滲んだ涙を拭い、ドルトンの手形がついた背中のシワを正した。
「じゃあ、俺も行かなきゃならない。また会える日を楽しみにしているよ」
 フューリィも、ネウロのようにラウンジを出て行く。
「さあ、俺らも行くぞ」
 ドルトンは、軽くストレッチをしながら言う。
 窓から部屋に差し込む光が強くなってくる。城壁を叩いていた雨音も、いつの間にか弱くなっていた。黒々とした雲は散り散りになっている。
「雨も、もうそろそろ止むな。早く行こう。椅子がなくなる」
 ドルトンは、僕とアレンの背中を叩き、先頭を切って出口に向かう。アレンと僕は顔を見合わせる。
「どうする?」
「行くよ。さっきの話もあるしさ」
「おい、何やってんだ。アレン、ブレイズ。雨上がり限定の突き出しが食えなくなるぞ」
「わかった。すぐ行く」
 扉に手をかけたドルトンが、こちらを振り返っている。アレンの返事を受けたドルトンは、扉を開ける。先に歩き出したアレンを追い、ラウンジを後にした。
 中二階の廊下を進んで階段を降り、跳ね橋を渡る頃には、雨はすっかり止んでいた。待合小屋で胸のプレートを返す。
「店はいつものところかな?」
「さあ。ドルトンの気の向くまま、かな」
「分かった。木馬を押して後を追いかけるから、先に行っててくれ」
「了解」
 さっさと大通りに向かうドルトンを、アレンが追いかける。僕は駐輪場の木馬を起動させ、ぐんぐん遠ざかっていく二人を追いかけた。

この記事から読み始めた人へ

最初から読みたい人はこちらをご覧ください。

【壊乱】#001

竜退治をテーマにしたオリジナル小説。 第1話。

執筆者プロフィール

長谷川雄治(はせがわ・ゆうじ)

物書きな作れるWebコンサルタント。
HTML/CSSのマークアップやWordPressのカスタマイズ案件を経験し、サービス構築やブランディング、サイト設計や戦略プランニング、各種原稿、書類作成まで担う。
独自色の強いコンテンツマーケティングの人という立ち位置も見出だしつつあり、不足しているものを補うべく、日々実践中。

2016.03.12

2018.05.02

Loading...
Facebook Messenger for Wordpress