【壊乱】#013

2016.03.12

竜退治をテーマにしたオリジナル小説。
第13話。

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 右肩に疼くような熱と痛みを感じながらも、さらなる丘の上へ木馬を向ける。だんだん、街灯が少なくなっていく。人通りも疎らになり、夜の冷たさが一層身に染みる。
 街の中心部からも遠く、木馬も唸りを上げながら登るような坂の上には、安いだけの共同住宅が立ち並ぶ。明かりが漏れてくる窓の向こうは、快適さとは程遠い、寝に帰るだけの部屋ばかりだろう。
 自分の家も似たようなもんだ。集合住宅の前で木馬を停める。共同の駐輪場に置き、外付けの階段を登って二階奥の部屋に入った。
 部屋の奥の窓から月明かりが入ってくる。明かりをつけないまま、カバンを適当に置く。腰の宝剣は、ローテーブルの上に置いた。
 着の身着のまま、ベッドに身を投げた。襲ってくる睡魔に、そのまま身を委ねかけたが、右肩の痛みがそれを妨げる。
 ベッドの上で身体を起こし、ランプを灯した。肩の傷は大したことはないが、放っておけば面倒かもしれない。壁際の小さなチェストの一番上、引き出しを開けると軟膏が入っている。それを取り出して肩に塗る。上にあてがうガーゼや包帯になるものはもう、残っていない。
 右肩が焼けて無くなった服を脱ぎ、コート掛けのハンガーにかける。そのまま下に目を移すと、口の開いた鞄の中に、エマに借りたタオルが顔を覗かせていた。
 これだけでも洗ってから寝よう。
 もみ洗いして、ベランダの物干しにぶら下げた。翌朝には、乾くだろう。
 明日、エマのところに持って行こう。持って行ってから、どうする?
 部屋の隅に視線を投げる。ランプの光は部屋の隅々までは届かない。
 隙間風に、ランプの明かりが揺れる。ローテーブルに置いた宝剣の影が壁に移って、生き物が身じろぎするように踊った。
 ぼーっとベッドに腰掛けて座っていると、いつの間にか、身体が冷えてしまったようで、軽く身震いした。ランプを消して、薄い布団に潜り込む。
 天井をぼんやり見つめていると、久々に出会った人たちの顔が浮かんでくる。
 睡魔が、戻って来た。目蓋はゆっくりと降りてくる。抗いきれない力が、僕の意識をこの場に縛り付ける。意識は体を通り抜け、現実から夢の世界へ、ゆっくりと落ちていった。

 下の部屋の住人が、犬の散歩に出かけるらしい足音で、目が覚めた。頭はスッキリしているものの、夢は見たかどうか覚えていない。
 ベッドの上で身体を起こす。右肩の傷はほぼ癒えている。二、三日もあれば傷跡も見えなくなりそうだ。
 窓の外には、やや不恰好に揺れるタオルが見えた。触ってみると、すっかり乾いている。タオルを畳み、鞄にしまった。
 ベッドに腰掛けて部屋の中に視線を投げる。明るくても暗くても、この部屋の印象は大して変わらない。半年も住んだのに、壁や家具が日焼けした程度だ。こまめにしている掃除のせいで、かえって生活感は感じられない。
 ここでこうして一日中ぼーっとしていても、何も変わらない。しばらく、生活に困ることもない。それも、選択肢の一つだ。
 下の部屋で、犬の吠える声が聞こえる。犬をなだめる家主の声は、ドアの音ともに小さくなった。
 ぼーっとしていただけなのに、腹の虫が鳴る。ハンガーにかけた服を着て、テーブルに置いた宝剣を一応腰に佩く。タオルを入れたことを確かめて鞄を肩にかけ、部屋を出た。

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執筆者プロフィール

長谷川雄治(はせがわ・ゆうじ)

物書きな作れるWebコンサルタント。
HTML/CSSのマークアップやWordPressのカスタマイズ案件を経験し、サービス構築やブランディング、サイト設計や戦略プランニング、各種原稿、書類作成まで担う。
独自色の強いコンテンツマーケティングの人という立ち位置も見出だしつつあり、不足しているものを補うべく、日々実践中。

2016.03.12

2018.05.02

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