【壊乱】#019

2016.03.12

竜退治をテーマにしたオリジナル小説。
第19話。

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 ヒューリィが足早に部屋を出て行く。それを追いかけて、僕らも武器庫を後にする。武器庫から真っ直ぐ、大階段を横切って奥の部屋に向かう。ヒューリィは、士官用の会議室の前で足を止め、ドアにノックをする。
「ネウロ、入るぞ」
 中の返事を待たずに、ドアを開ける。ヒューリィは手招きをして、僕らを先に部屋の中へ入れる。部屋の中では、地図や書類の束を見ているネウロが、上座に座っていた。
 ネウロは顔を上げた。
「まあ、座れ」
 ヒューリィはドアを閉め、ネウロの隣に座った。僕も奥へ進み、ヒューリィの向かいに座った。後の面々も、手近な椅子に座る。ネウロは隣に立っていた兵士に顔を向けた。
「彼らの装備を控えておいてくれるか? 今後も調達せねばならん」
 兵士は短く返事をし、ボードとペンを持って部屋の中を歩き始めた。ネウロは、地図の方へ目を向ける。
「まあ、気にはなるだろうが、こちらに集中してくれ」
 ネウロの目は、僕らの顔を順番に見つめる。椅子の後ろでは、兵士がゆっくりと歩きながら装備の型番や特徴を調べていく。
「まず、行程の確認だ。西の山は、アソコだ」
 ネウロは片側十人掛けの長テーブルに広げられた地図の、端の方を指で差した。
「途中に丘や砂漠、川や沼地、森も控えている。不眠不休で馬車を飛ばしても、五日はかかるだろう。だが実際は、そうはいかない」
 ネウロは地図の上に資料を広げた。
「支給される武器弾薬、水や食料等を鑑みると馬車に人が乗るスペースはない」
 地図の上に置かれた地図のうち、馬車の詳細が書かれた資料に目を通す。
「途中で現地調達をするにしても、何が起こるかわからない以上、道中の行程は基本的に人の足で行く」
「人の足で? マジかよ」
「ああ、そうだ。ドルトン。仮に馬車で行ったとして、魔獣や現地の盗賊と戦闘になったらどうだ? 即時対応が可能か?」
「確かに、そうなると歩いていた方がいいな」
「だが、歩いて行くとなると、相当日数はかかるが、それは大丈夫なのか?」
「いい質問だ。アレン」
 ネウロは、手元の地図を指さした。この国、アレキサンドリアからスタートし、西へ向かう道がある。
「ルートセブン。この道で西の山まで行けば、武器弾薬等の現地調達や宿の確保は難しくない。途中の7つの友好国には、我が騎士団の分団もあるし、装備や資金の調達は問題無い。確実に目的地へ向かえばいい」
 アレンは、地図上のルートセブンを目で追いかけ、椅子から身を乗り出した。
「ルートセブンって、まだ魔物の討伐が進んでいない未開の道じゃないか」
「だから行くんだよ、アレン。貴様は半年のブランクを抱えたまま、いきなり最強の敵と戦うつもりか? ドルトンやブレイズは、新しい武器に持ち替えたばかり。馴染まぬ武装で、満足に戦えもしない仲間を、危険にさらしたいのか?」
 アレンはネウロの顔を睨みつけながら、押し黙る。
「まあ、確かにそれはそうだ。このメンツでの連携も初めてだし、手頃な連中で慣らしておくのは、僕も賛成だ」
「ブレイズ……」
 アレンは僕の方を見て、ゆっくりと椅子に座った。
「でも、この道を選ぶのは他にも理由があるんだろう?」
 僕は広げられた資料の中から、ドラゴンの絵が描かれたものと、データが記載された紙とを拾い上げた。
「さすがはブレイズ。話が早い。実は、ドラゴンはルートセブンに沿うように西の山へ戻り、その途中、例の鱗を何枚か落としてしまったらしい」
 ネウロは、データの記載された紙とは別に、個別に印刷された拡大版の地図を7枚、地図の上に広げる。
「異常に強い瘴気が、7箇所で確認されている。観測された地域はいずれも、各国家の交流を断絶するような位置にあるし、観測された地域の周辺では、魔獣による甚大な被害も報告されつつある」
「それじゃあ、急いだ方がいいんじゃないのか?」
 ドルトンが身を乗り出す。
「今は各国家の兵力と、我が騎士団の分団が事に当たっている。しばらくは彼らを当てにしよう」
「だからって」
「放置するわけにもいかない。それは百も承知さ、ドルトン。だから、このルートを辿り、各地の魔物、魔獣を討伐して力を蓄えながら、最終的にはドラゴンを倒す旅になる。急ぎはしないが、余裕もあまりない行程ではある」
「ほぉ〜。なるほどねぇ」
 ドルトンは胸の前で腕を組み、背もたれに身を委ねた。

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【壊乱】#001

竜退治をテーマにしたオリジナル小説。 第1話。

執筆者プロフィール

長谷川雄治(はせがわ・ゆうじ)

物書きな作れるWebコンサルタント。
HTML/CSSのマークアップやWordPressのカスタマイズ案件を経験し、サービス構築やブランディング、サイト設計や戦略プランニング、各種原稿、書類作成まで担う。
独自色の強いコンテンツマーケティングの人という立ち位置も見出だしつつあり、不足しているものを補うべく、日々実践中。

2016.03.12

2018.05.02

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