【壊乱】#020

2016.03.12

竜退治をテーマにしたオリジナル小説。
第20話。

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 ドルトンの椅子の後ろを、兵士が通り過ぎる。ネウロは兵士へ声をかけた。
「装備の控えは、まだかかるかな?」
 兵士は顔を上げる。
「いえ、もう一通りは」
 ネウロは椅子から立ち上がり、兵士の胸元にあったボードを受け取る。神にさっと目を通し、一番上の紙を切り取った。
「このボードと、控えの用紙を急ぎ調達係へ持って行ってくれ。それが済めば、この仕事は終わりだ。戻ってくれ」
「はっ」
 兵士はボードをネウロから受け取り、右手で敬礼を取る。ネウロが頷くと、小走りに部屋を出て行った。ネウロは紙を見ながら、椅子に戻る。
 地図の上に広げていた書類をまとめながら、口を開いた。
「伝達事項は以上だが、今のうちに聞いておくことはあるか。ブレイズ」
「全体の予定日数と、今日の目標ぐらいは聞いておきたいかな」
 ネウロは、書類の一番上に先ほどの紙も添え、天板の上で書類を整える。自分の脇に置き、顔を上げた。
「全体の日程としては、最短で往復一ヶ月。アレキサンドリアの警備が手薄になることも考えると、最長でも三ヶ月程度で終えておきたい。だが、こればかりはやってみないと分からんのでな。半年から一年かかるかもしれない。そこは覚悟しておいてくれ。それと、今日の行程だが」
 ネウロは椅子から身を乗り出し、地図の上に指を這わせた。指は森林地帯の手前で止まった。
「今日はここが目標だ」
 地図の上には、国境を示す線が北から南に走っている。
「フォレスタとの国境か。初日から随分と歩かせるじゃないか」
 ドルトンは椅子から立ち上がり、ネウロの指の先を覗き込んだ。
「実際は、森の手前にある宿場町、ウッドフィールドが今日の目的地だ。名物の温泉に浸かるには、そろそろ行かねばならん」
 ネウロは机の上の地図を素早く、確実に巻き取った。椅子から立ち上がると、書類一式を脇に抱えて歩き出した。
「ほら、行くぞ」
 ネウロは振り返ってそれだけ言うと、さっさと前を向き出口に向かう。僕らも椅子から立ち上がり、ネウロの後を追う。
 ネウロは大階段まで戻り、一階まで降りていく。若干の速足を緩めることなく、城門とは反対方向、中庭の方へ足を向ける。装備がやや重そうなドルトンに気を配りながら、弾む行きと呼吸を整えながら、ヒューリィ、グレイシアの背中を追いかけて、中庭に出た。
 見習いの少年騎士団員が訓練をしているのを横目に、馬房の方へ歩く。獣臭が漂う頃には、立派に儀装された馬車が見えて来る。
「あれが俺たちの馬車か」
 ドルトンは、声を弾ませていう。
「四頭立てとはな。こりゃあ、世話が大変だぜ?」
 馬車の前で足を止める。馬車には、四頭の馬が繋がれていた。ドルトンの声に振り向いた燕尾服の男は、僕らに向けて、恭しく頭を下げた。
「セバスチャンにございます。以後、お見知り置きを。ドルトン様、馬の世話、馬車の手綱は私がやりますので、ご安心ください」
 セバスチャンは顔を上げて、ドルトンに微笑んだ。
 一足先に馬車までたどり着いていたネウロとヒューリィは、荷台に書類を積み込んでいた。ネウロが僕に向けて手招きをする。
「ブレイズ。荷物の確認を」
 隙間なく詰められた荷台を眺める。武器弾薬、臨時の食料は十分に思える。
「途中で補給も出来るのなら、これでいいんじゃないか」
「細かな弾薬や食料は途中の宿場町でも補給はできるが、基本的にフォレスタまでは、この荷物だけで持たせるつもりで頼む」
「了解した」
 ネウロは、荷台のそばに立っていた兵士と会話をし、ボードの書類にサインをして兵士を下がらせた。
 ネウロ、ヒューリィとともに、馬車の前で待っているアレン達の元へ戻る。

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【壊乱】#001

竜退治をテーマにしたオリジナル小説。 第1話。

執筆者プロフィール

長谷川雄治(はせがわ・ゆうじ)

物書きな作れるWebコンサルタント。
HTML/CSSのマークアップやWordPressのカスタマイズ案件を経験し、サービス構築やブランディング、サイト設計や戦略プランニング、各種原稿、書類作成まで担う。
独自色の強いコンテンツマーケティングの人という立ち位置も見出だしつつあり、不足しているものを補うべく、日々実践中。

2016.03.12

2018.05.02

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