【壊乱】#022 【壊乱】#022

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「さあて、そろそろ行きますか」
 ドルトンは身体を大きく動かした。ゆっくりと身体をほぐし、大きな矢印のついた看板を撫でた。
「ルートセブン。これに沿って行きゃいいんだろ?」
 ドルトンは矢印の先に顔を向ける。果てしない草原が広がる中、そこだけ草が生えていない地面。緑の中に惹かれた土色の線が、奥の方まで続いている。看板には、ルートセブンの文字と矢印が描かれていた。
「で、陣形はどうする。馬車は一番後ろか? 中央か?」
 ドルトンは僕の方に顔を向けた。
「見通しがいいから、二列縦隊で行こう」
「でも、そうなると広がる陣形はぶっつけ本番にならないか?」
 アレンが後ろから声をかけてきた。
「フォレスタとの国境、『迷わずの森』も二列縦隊って訳にはいかないだろう」
「確かに、それもそうだ。ウッドフィールドを出たら、森はすぐだもんな」
「どっちにしても、今日はお試しだろう。どっちもやればいいさ」
 アレンは驚いたようにドルトンを見る。
「ドルトンにしちゃ、いい案だな」
「脳筋だからよ。サッサと動けりゃあなんだっていいんだ、よ」
 ドルトンは勢いよく振り返り、右手の盾を低めに投げた。盾が飛ぶ先に、小さなウサギのような魔物が一匹、こちらに体を向けていた。盾が魔物を切り裂くと同時に、光の矢が魔物の眉間に突き刺さる。
 ドルトンは、盾の鎖を巻き取りながら、後ろを振り返る。
「流石だな、ヒューリィ」
 弓状の武器を構えていたヒューリィは、構えを解いて、武器を畳んだ。
「後ろはあいつとネウロ、前は俺たち。取り敢えずそれで行こうぜ」
 鎖を巻ききったドルトンは、盾を籠手に付けながら歩き出した。
「ちょ、おい。ドルトンーー」
 アレンはドルトンの背中を追いかける。僕はアレンを追いかけた。アレンの横に追いつくと、ペースを落として口を開く。
「まあまあ、取り敢えずそんなんでいいんじゃないか」
「そんなに適当でいいのか、隊長」
「いいんじゃないの? これでいいかな、ネウロ!」
 後ろのネウロを振り返る。ネウロ、ヒューリィは馬車の隣を歩きながら、ゆっくりとこちらに向かってくる。グレイシアは僕らとネウロの間を歩く。
「気難しい姉さんに、自由なバカ。お堅い王子のご一行か。この隊長は、大変だねぇ」
「そうさ。だから、手伝ってくれよ」
「やなこった」
「えぇっ」
 アレンの口角が僅かに上がる。
「冗談だよ、冗談。俺の命も預けるからな、お前も全力で頼ってくれよ」
「アレン……」
「おぉーい、何やってんだ。早く来いよ」
 ドルトンが道の遥か先で振り返り、両手を口の横に当てて叫んでいる。
「あのバカ。全力で走りやがって」
「まあまあ。とりあえず、僕らも行こう」
 歩くペースを少し上げ、徐々に駆け足になる。ドルトンは足を止めて待ってくれている。隣で走っていたアレンは徐々にペースを下げた。僕一人で、ドルトンのそばまで行く。後ろを振り返ると、アレンは走るのを諦め、ゆっくりと歩き始めた。グレイシアの真横ぐらいを歩いている。

長谷川 雄治

長谷川 雄治はせがわ ゆうじ

2013年から、仮面ライターを掲げて活動中。
物書き&Web制作、コンサルティングが本業だと思い込んでいる、ただの変な人。