【壊乱】#026

2016.03.12

竜退治をテーマにしたオリジナル小説。
第26話。

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 ドルトンの背中の向こうは、開けた草原と道路が続いている。上空にも異変はなさそうだ。後ろを振り返る。最後尾はネウロとヒューリィ。馬車の両側をアレンとグレイシアが固めている。ヒューストン親子は御者台に座り、セバスチャンとともに揺られている。
歩く速度を落とし、アレンが歩く馬車の右側に身体を寄せる。
「異変は、あるかい?」
「いや。全く。強いて言えば、お前の獣臭かな」
「ああ、これ」
 アレンは、僕の鎧にかかったブラックベアーの体液を指差した。背中と頭にかかったそれは、そのままにしてある。
「最悪、僕のところに来るでしょ」
「それはそうかもしれないが、そういうのは、あそこのバカがやればいいんだ。リーダーのお前が負傷したら、指揮系統が乱れる」
「そう、かな。ネウロもグレイシアもいるし、僕でなくても」
 視線を馬車の後ろに投げる。ネウロとヒューリィは、淡々と一定の歩幅で歩き続けている。
「お前じゃなきゃ、俺とあそこのバカはついて来ないさ。だから、あの直情的な熱血バカにくっついて前に出過ぎるのも、気をつけなきゃ」
「そうかな」
 アレンの顔に視線を向ける。
「そうさ」
 アレンはそう言うと、僕の顔に向けていた目を、遠くの空に向けた。歩く速度を落とし、空を見回す。アレンの顔の先を追った。大きな影が近づいてくる。
 顔を水平に戻し、前を見る。一人で先頭を歩いていたドルトンは足を止め、右の盾を構えていた。馬車が速度を落としていく。
「来たか」
「お前の獣臭、血の匂いのせいで、会いたくない連中が押し寄せてる。これから本命も来るんだから、全く羨ましいよ」
 アレンは、銃を引き抜いた。
「本格的な実践が歩きながらとはね。ま、こいつを試すさ」
「悪いね。僕のせいで」
「全くだ」
 僕は馬車の前に回る。御者台のセバスチャンに声をかける。
「このまま、戦闘に入ります。馬車は絶対に止めないでください」
「分かりました」
「ティモシーさん、息子さんを頼みます」
 ティモシーは、緊張した面持ちで頷いた。ウィリアムを両手で包み込む。
 馬車は落としていた速度を元に戻す。魔獣の気配に気がついた馬たちは、僅かに速度を上げる。
 上空には猛禽類の姿をした魔獣、カイトが集まり、輪を描くように旋回している。ウサギの額に一本のツノを生やしたような魔物の闇ラビ、猟犬のような四肢を持つ、ストライプ・ジャッカルらが馬車の周りを囲い始めていた。
 剣の柄に手をかけ、馬車の後ろに向かって大声を上げる。
「総員、戦闘配置だ。馬車の防衛を最優先とする」
 カイトの一匹が、上空から急降下してくる。馬車の後方から、光の矢が飛び、カイトを貫いた。カイトは空中で動きを止め、勢いを失って真っ直ぐ地面に落下する。
 そちらに目を向けると、ヒューリィが弓に指をあてがっていた。次の矢を指先に形成しながら、上空を見上げる。上を向いたまま、口を開く。
「上と後ろは俺たちに任せて、お前は前に行け」
「了解。ここは任せた」
 波打つ刃の剣を抜いたネウロに、目を向ける。ネウロはちらりとこちらを向くと、小さく頷いてすぐに後ろを向いた。

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執筆者プロフィール

長谷川雄治(はせがわ・ゆうじ)

物書きな作れるWebコンサルタント。
HTML/CSSのマークアップやWordPressのカスタマイズ案件を経験し、サービス構築やブランディング、サイト設計や戦略プランニング、各種原稿、書類作成まで担う。
独自色の強いコンテンツマーケティングの人という立ち位置も見出だしつつあり、不足しているものを補うべく、日々実践中。

2016.03.12

2018.05.02

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