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著者 | デービッド・アトキンソン |
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出版 | 講談社プラスアルファ新書 |
金融関係のアナリスト出身の著者は、文化財の修理・補修を行う会社の取締役。
数字の世界を見て、伝統文化の世界も見てきた異邦人が見出した、日本と日本人論。
著者は他に、観光立国に関する書籍なども出されていて、そっちでの快刀乱麻ぶりが面白かったので読んでみました。
以下、自分の解釈を多分に含ませながら、まとめてみます。
結論は、「現場は優秀、指揮官無能」
愚直と言えるぐらい勤勉で、真面目なサラリーマンや職人さんが支える国。
自分の仕事に誇りを持ち、ただの金稼ぎではないと技能を磨いたり、新しい技術を生み出したりするところは間違いなく強みだと、著者はいう。
しかし、一人当たりの生産性はそこまで高いとは言えず、組織が硬直してしまったり、ボトムアップの提案を「面倒臭い」と潰して革新をしなかったり、手続きそのものを煩雑にしてしまう経営者は、そこまで優秀ではないとも主張する。
戦後70年以上経つ割には、当時から言われていたことと全く同じことが今の日本にも受け継がれている様子。
数字を見ない。無駄を見直さない
一定の権力を握り、人を指揮する場に回った日本人はどうやら、数字よりもイデオロギーを重視してしまうようで、過去の慣例をいつまでも守り続けたり、GDPに繋がらない仕事に時間を割いたりしてしまう傾向があるらしい。
そういった積もり積もった無駄や、変えようとしない性質が、一人当たりのGDPを押し下げているようで、今後人口が減少していく社会の中ではこのままでは着実に国力が衰えるのではないだろうか、というのが本書を見て見えてきた一つの答え。
ノブレスオブリージュ、公共の精神が足りない
自分たちだけがよければいい、誰か(=お上)がやってくれると思うのか、個人の都合は主張しながら、自分たちの価値観を押し付けてしまう、誤った職人気質なところもあるようだ。
公共のために自分たちも力を割いたり、協力しようとする機運もそこまで高くはなく、他の書籍で指摘されていたところでは、募金や寄付なんかも日本はそれほど多くないという。
ましてや、力を得た人たちがその立場に応じて公に対してなんらかの責務を果たすという風潮も、あまり見られないように思う。
経営者なら経営者として、資産家になったなら資産家として得たものを周りに還元していくという姿勢であったり、自ら先頭に立つという価値観も日本では希少な気がする。
変えていかなきゃならないことは沢山あるのに、「面倒臭い」と抵抗する
生産性の低い会議や、無駄の多い手続きなど。
見直して行けばいくらでも生産性は向上出来るのに、そういったことに抵抗するのは大抵、イケてない経営者やリーダーであることが多いような気がする。
変えていかないといけない位置にいる組織の人たちほど、古い慣習に則った、無駄なことをやっている傾向が高く、その無駄な作業にすら勤勉さや真面目さを発揮してしまう現場もいたりして、どんどんGDPや売上につながらないことに注力してしまう環境が整ってしまっている。
優秀な現場の頭を押さえつける、無能なリーダー
自分たちの立場が脅かされると思っているのか、たまたまリーダーになってしまった人や、リーダーに向いていないのにリーダーになってしまった人たちが、若くて優秀な人たちの才能や時間、能力を奪ってしまえば、生産性は上がらないし、経済も上向くはずがない。
今後ますます人口が減少していくことが予想される中、本当にやるべきなのはそういった重石を取り除いて、変えられるところはどんどん変えていくことなんだけれども、本をあまり読まない経営者たちは、かつてのまま会社を経営し続けていくのだろう。
ほんの少しでも、そういった人たちの意識を変えて、社会を少しずつ変えていければとは思うのだけれども、それを望んでいる人は少ないのかもしれないな。
もっと自由になれるよう、変えていきたいんだけれどな……