『さよならインターネット』を読んでみた

2016.08.21

古典を読んだら、最近の本をと、業界関連の書籍を手に取ってみました。
個人的な振り返りも交えて、感じたことをつらつらと。

この記事は 約 5 分で読めます。

著者家入一真
出版中公新書ラクレ

「ぼくらはもう、別れを告げるべきところまで進んだのかもしれない」

著者の家入さんといえば、ペパボの創業者というイメージ。最近だと、「リバ邸」とか「(舛添さんが出た時の)都知事選」とか。

個人的には、ロリポップやムームードメインを使っていたこともあって、「楽天」の三木谷さんとかホリエモンよりも地続きな感じを持つ人。

「インターネット」について、家入さんの経験なんかも交えて綴られた印象がある。エッセイとは言えないし、技術関連の「予言の書」系でもない。糸井重里氏の『インターネット的』の現代版を家入さんのテイストで書いた一冊、といえばいいのだろうか。

「最近の若者」とのやりとりで出てきた、「インターネット = ハサミ」や「インターネット = LINE」、「インターネットが好きか嫌いか」というところから、家入さんとインターネットとの関わり方が綴られていく。それを端的にまとめてしまうと、帯に書かれてある上のフレーズということになるようだ。

インターネットは、「輪郭」を失いつつある

家入さんはパソコン通信の頃から(?)、僕個人としてはブロードバンドも一通り行き渡った気がする、mixiの全盛期前後からインターネットには触れている。僕より10歳ぐらい上の家入さんはもちろん、僕自身もインターネットやSNSを通じて画面の向こう側にいる人とコミュニケーションをしてみたり、そこからわざわざ文通をしたり、ハンドルネームで呼び合ってオフ会したりといったことも少しだけ経験してみたりしたのが、2009年とか2010年とか、ちょうど就活が本格化する手前ぐらいの出来事だったのかな?

大学を卒業する2010年頃から、Facebookなんかが勢いを増してきたような気がするけれども、その数年前まではYoutubeも無法地帯な感じだったし、通販サイトも大手や法人さんがメインな感じで、個人間のやりとりや個人のECサイトでクレジットカード決済を使ったりするようなことはなかったような気がする。

スマホも流行り始めたけれども、アプリはまだまだそこまで多くはなかった気がするし、専用のガジェットもだんだん増えてきた印象だった。

全然、「インターネットをする」とか「インターネットを使う」という感覚は理解できるし、一部のアングラな感じもかろうじて感じ取れた身としては、「インターネット = ハサミみたいな感じ」と言われた家入さんの気持ちもわからなくもない。

また、「インターネット = LINE」、「LINEがあれば、他はいらない」という若干閉じた感じの若者の感覚もわからなくもない。

インターネットはそこらへんにあって、ほとんどインフラの状態で、ましてやPCで触れるよりもスマホやタブレットの方が時間が長くなると、インターネットの姿や輪郭、使うという感覚はどんどんなくなっていって、当たり前のものに対して僕らはわざわざ向かい合ったり、好きだとか嫌いだとか言っているということになるらしい。

少しだけ下の世代ですらそんな感覚なのであれば、これからどんどんIoTが本格化していく世代になれば、インターネットをわざわざ考えたり得ることもなくなっていくんだろうなぁ、というのは自分としても理解できる考え方ではあった。

輪郭のなくなったインターネットは、狭くなっていく

mixiの興盛から終焉にかけて、PCをメインにインターネットに触れていた頃でも、インターネットはどちらかというと「オタク」な臭いというか、万人が使うというには少しハードルが高いものに思えた。
ドメインやサーバ、HP制作のお仕事をされていた家入さん、あるいはそのインフラや端末をゴリゴリ開発していたもっと前の世代に人たちなら、その感覚はもっと強くて、「お母さんには内緒だ」という雰囲気があったんだろうと想像する。

でも、「スマホとSNS」が当たり前になり始めると、そんな「特別な臭い」は無くなってきて、「特別な場所」や「特別なツール」といったところから、「一般的なもの」に移り変わっていくと、バーチャルなはずの人間関係もリアルと地続きに展開されるようになってしまって、スマホでの利用率が高そうなLINEが勢いを増してくるとどんどんその人間関係の輪が狭く濃いものになっていた?

せっかくの世界中に広がった匿名の優しかった世界は、狭くてドロドロの内輪話や共通の話題で閉じた世界に変わっていって、インターネットはもはや、リアルと同じどころか、リアルをより濃くするようなものになってしまって、輪郭を失った外とのつながりは内へ内へとベクトルが向かうようになってしまったような感覚は、個人的にも分からなくはない。

輪郭がなくなる世界だからこそ、もう一度外に出よう

広い世界とつながるきっかけだったり、リアルな世界の逃げ場にもなっていたりする「インターネット」がどんどんインフラになっていくって、狭くなり始める風潮だからこそ、もっともっと知らない人、知らない知識、知らない世界にこちらから出会いに行って、どんどん世界を広くしていくことが重要なのでは?

今までの向き合い方、使い方を一度忘れて、もう一度新たにインターネットに向き合ってみる。
新しい時代に、新しい関係を築くための「さよなら」を。

そういう気持ちや、目に見えないイニシエーションが必要になるのかもしれないなと考えた書籍でした。

執筆者プロフィール

長谷川雄治(はせがわ・ゆうじ)

物書きな作れるWebコンサルタント。
HTML/CSSのマークアップやWordPressのカスタマイズ案件を経験し、サービス構築やブランディング、サイト設計や戦略プランニング、各種原稿、書類作成まで担う。
独自色の強いコンテンツマーケティングの人という立ち位置も見出だしつつあり、不足しているものを補うべく、日々実践中。

2016.08.21

2018.04.30

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