『道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』を読んでみた

2016.08.24

お金と情報とが等価値になっていくというのなら、そこに重要な役割を果たすのは道徳ではないだろうかというところから読み始めた、宮崎哲弥氏のお勧め書籍。つらつらとまとめてみる。

この記事は 約 3 分で読めます。

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著者管賀江留郎
出版洋泉社

冤罪事件と近現代史

評判を得てしまったある警察官と、彼がでっち上げてしまった冤罪事件とを追いかけていく書籍。

戦前、戦時中、戦後の日本に対する正しい認識もできていないというのがどんどん明らかにされていく感覚は、中々に強烈な体験。

あんな人やこんな人が色んな時系列で絡み合いながら、その時々の事件、政治も相まってどんどん現代の日本が出来上がっていく。
情報統制、プロパガンダというのも恐ろしいというのも、改めて感じる一冊だった。

認知バイアスと道徳

冤罪をでっち上げることになってしまった警察官の問題は、「こうだ」という思い込みを周りに信じ込ませたことにあるような気がする。
一見繋がらない証拠同士をつなげ、自白を誘発して冤罪を連続して作り出してしまう。

周囲は周囲で、評判や評価を得た時の人に疑念を抱くことなく、貼り付けられたラベルを見て発言をそのまま受け取ってしまう。

集団の中でも競争していい位置を獲得しようとする、集団の中での道徳観も働いて、件の人物は冤罪を生み出してしまった。

また、進化の過程で人が持ってしまった、「共感」の能力も、彼の思い込みや認知バイアスに磨きをかける形になってしまい、冤罪の量産を止めることができなかった。

認知バイアスと報道、プロパガンダの恐ろしさもそこにはあって、誰かが逮捕されたというだけで、その周りや家族も犯罪者というラベルをつけられて、報道や噂話が加速するにつれて、真実を問わずに責められることにもつながってしまう。

負担を減らそうとする脳の習性に負けて、ついついバイアスのかかった簡単な答えを鵜呑みにしてしまい、集団の圧力をかけてしまう人という生き物は、相当恐ろしい生き物だとも思えてしまう。

正しく物事を見ようとした人たちと、現代日本を作り上げた「魂」の人々

データをきちんと見抜いてプロファイリングをする、鑑識の祖のような人物や、冤罪事件を弁護した政治家にまつわる昭和史も間に挟まれていて、そこはそこで面白いとは思いつつも、少々話題があっちこっちに行ってしまったかなという感覚はなくはない。

宮崎哲弥氏がラジオでおすすめするだけあって、色んな話題が面白かった一冊。分厚いけれども、割と一気に読めてしまうと思うので、おすすめ。

アダム・スミスの『道徳感情論』的なものを考えていると若干期待外れにもなり得るので、ご注意を。

執筆者プロフィール

長谷川雄治(はせがわ・ゆうじ)

物書きな作れるWebコンサルタント。
HTML/CSSのマークアップやWordPressのカスタマイズ案件を経験し、サービス構築やブランディング、サイト設計や戦略プランニング、各種原稿、書類作成まで担う。
独自色の強いコンテンツマーケティングの人という立ち位置も見出だしつつあり、不足しているものを補うべく、日々実践中。

2016.08.24

2018.04.30

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