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著者 | こだま |
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版元 | 扶桑社 |
どんな内容なのかは、タイトルやレビューを読んでいただければ分かるだろうから、読んでみて感じたことを中心に書いてみる。
純文学じゃなく、社会派エッセイ、ルポっぽい
最初は、西村賢太氏の『苦役列車』的な系統の私小説家と思っていた。あるいは、江國香織氏や西加奈子氏が書きそうな、「今風の恋愛小説」かと。実際の読後感は、物凄くライトに書かれた社会派エッセイを読んだ気分。あるいはルポルタージュ。ノンフィクションかどうかは分かりかねるけれども、フィクションと言い切るには難しいところ。でも、小説でないことは間違いないだろう。
読んでみて思い浮かんだのは、恋愛小説よりは、大平光代氏が書かれた『だから、あなたも生きぬいて』(講談社)。もっともっと軽いテイスト、軽い話題だとは思うけれども、ある種の陰鬱さ、暗さに関しては近いような気がする。
ただ、表面的には割と軽やかな感触。文体や言葉の選び方のせいだろうか。川上未映子っぽさもなくはないし、村上春樹的な感じもなくはない。とにかく軽い筆致で、骨太な問題なんだけれども極めて個人的な話題を綴っている。そんな感じがした。
これもリアル。多様化したっていいじゃない
「入らない」とセットで綴られている問題に対しても触れておいたほうがいいのだろうけど、そこはあんまりピンとこなかったので、触らないままで行く。というよりは、自分のプライベートも省みれば、割と「入らない」問題も「子供」問題も身近で他人事ではないというのもあり、そっちで色々考えてしまう要素が多かった。
今や、「結婚」一つとってみても、多様化している。伝統的に見える「若くて初婚」であっても、その内情は実に様々だ。親兄弟であっても、踏み入っていい問題とそうでない問題とがある。誰にでもある話だからこそ、誰にでも言いたい話でもない。「それ」ばかりが問題でもないだろう、と。
軽視するつもりもないし、本書でも延々綴られているように、当事者にとっては「大問題」だし。そこから逃げるつもりもないのだけれども、過剰にプレッシャーをかけるのも、過剰に気にしすぎるのも良くない気がする。そういう部分も、多様化で選択の自由があると言ってもいいのではないだろうか。(もちろん、当人たちの意思が最優先だけれども)
社会問題でもあるし、個人の問題でもあるし。リアルでもあるし、フィクションっぽさもある問題だし。「ゆとり」やそのちょっと上の世代的には、ここに至るまでの問題もいくらかあるし。そういった部分に関しては、まだまだ書く余地も書く価値もある気がした。
自分のかけらを埋め込んだ、リアルな話。あるいは純文学が、やっぱり面白いし、興味深い。自分も逃げずに、赤裸々にそういうことも書かなきゃいけないのかな、と思ったところで書評を終えてみる。書評、になった?